むし歯(う蝕)とはどんな病気か

 むし歯は、口のなかに常在している細菌の感染により歯質が軟らかくなり、崩壊していく病気です。日本では、食生活の変化とともに多くの人が罹患(りかん)するようになっています。
 6年に一度行われる歯科疾患実態調査の最近(2005年)の結果では、6歳における乳歯のむし歯および12歳における永久歯のう蝕有病歯率(ゆうびょうしりつ)(処置された、あるいは未処置のむし歯をもっている割合)がともに回を追うごとに減少してきています。すなわち、乳歯・永久歯ともむし歯の急増しやすい時期における減少傾向が認められます。
 むし歯は、砂糖を含む食物との関連が深いことがわかっています。とくに毎日の砂糖を含む食物の摂取量が多いと、むし歯が多発することがあります。

原因は何か

 むし歯は、口のなかにいる細菌、砂糖を含む食物、むし歯になりやすい歯質、の3つの要因が重なって発生します。とくに、食事後に歯に付いた食物の汚れをきちんと取らないで放置しておくと、その汚れが何層にも重なって細菌といっしょに歯の表面に付着します。
 この付着物をプラークと呼びますが、プラーク内にある糖が細菌によって分解され、酸をつくります。この酸が、歯の表面にあるエナメル質という硬い部分を軟らかくしていきます。これを脱灰(だっかい)といい、初期のむし歯の発生となります。
 むし歯になりやすい部位として、臼歯(きゅうし)のでこぼこした部分(咬合(こうごう)面)、歯と歯の間の隣接面、歯と歯肉の境目の部分(歯頸部(しけいぶ))があげられますが、いずれもプラークがたまりやすい部位です。
 むし歯を引き起こす細菌としてミュータンス菌が注目されています。ミュータンス菌は病原菌ではなく口のなかに普通に存在しているので、なかなか排除することはできません。そこで、他の要因である砂糖をあまり多く摂取しないようにすること、そしてプラークをつくらないように食後に正しく歯をみがくことがむし歯予防に重要となります。

症状の現れ方

 むし歯は一般に、ゆっくりと進行する慢性の病気です。始めにエナメル質が脱灰し、そののち徐々に象牙質(ぞうげしつ)、歯髄(しずい)へと進んでいきます。むし歯がエナメル質にとどまっている場合には、ほとんど症状はありません。表面の色がやや褐色から黒くなることがあります。
 象牙質へ進むと、冷たい食物の摂取時にしみたり、硬い食物を噛んだ時に少し痛みを感じたり、エナメル質が崩壊して穴があいたりする症状が起こります。歯の表面が、粗くザラザラした感じがすることもあります。
 むし歯が歯髄へ到達すると、さまざまな痛みが起こってきます。放置しておくと、歯髄炎(しずいえん)を併発して強い痛みを感じるようになります。

検査と診断

 むし歯の診断には、(1)肉眼で判断する(視診)、(2)先端が細くとがった器具で触れる(触診)、(3)X線写真を撮影する(X線診)、(4)う蝕検知液で染める、(5)微量な電流を流して抵抗値を調べる(カリエスメーター)、(6)レーザーを当てる、などの方法があります。
 むし歯を診断するにはこれらを組み合わせて行うのが一般的ですが、まず視診と触診を行い、必要があれば、むし歯の深さを調べるためにX線診あるいは電気的抵抗値を測定します。
 むし歯と間違えやすいものに、歯の着色や変色があります。また、歯の表面の亀裂(きれつ)や破折(はせつ)も、むし歯と間違えやすいものです。

治療の方法

 むし歯が発見されたら、一般的にはその部分を除去し、歯によく接着する材料や金属で埋めて元の形にもどします。
 なお、初期のむし歯の取り扱いとして、要観察歯(CO(シーオー))という考え方が導入されています。従来、初期のむし歯と診断されていたもののうち、放置すればむし歯に進むおそれがあるけれども、検査の時点では処置する必要はなく、定期的に観察する必要のある歯のことをいいます。そのままの状態でむし歯に進まない場合も多いので、すぐに歯を削って詰める必要はありません。

むし歯(う蝕)に気づいたらどうする

 むし歯と感じたら、できるだけ早く歯科医療機関を受診するべきです。現在は、むし歯の進み方が軽いほど、歯を削る量も少なく、痛みもほとんどなく、処置も短時間ですみます。
 むし歯予防のためには、日ごろから歯の清掃を行い、砂糖などの甘い食物の摂取に注意し、歯の定期健診を受けることが非常に大切です。