中高年の8割に歯周病が

 歯周病は、歯のまわりにある組織(歯周組織という)のいずれか、あるいはすべてに起こる疾患の総称で、歯周疾患とも呼ばれます。


 歯周組織は、歯肉(しにく)(歯の根と骨をおおっている部分で、通称歯ぐきという)、セメント質(歯の根の表面部分)、歯槽骨(しそうこつ)(歯を支えているあごの骨の一部)および歯根膜(しこんまく)(セメント質と歯槽骨とを連結している膜で、歯周靭帯(ししゅうじんたい)ともいう)から構成されます(図30図32)。


 主として歯肉から炎症が起こる歯肉炎(しにくえん)や歯周炎(ししゅうえん)と、歯周組織の深部(セメント質、歯槽骨、歯根膜)から非炎症性で破壊が起こる咬合性(こうごうせい)外傷に大別できます。日本人の約7割が歯肉に何らかの異常があり、働き盛りの中高年では、実に8割の人に歯周病があると報告されています(表1)。
 これまで、歯周病は一度かかったら治らない不治の病ともいわれてきましたが、20世紀末になってその原因が次第に明らかになってきました。


 歯肉炎や歯周炎は、口のなかにすんでいる細菌(口腔常在菌(こうくうじょうざいきん))によって起こる感染症であることに意見の一致をみています(表2)。また、咬合性外傷は、歯周組織の適応能力を超えた力が加わることによって起こることもわかっています。

歯周病は生活習慣病

 最近では、歯周病は生活習慣病として位置づけられ、食習慣、歯みがき習慣、喫煙などとも関連があるので、単に歯科医による治療のみではその効果があがらないことも明らかになってきました。患者さん個人の生活習慣の改善、自助努力も歯周治療の成否に大きく関与することを理解することが大切です。


 歯や口は、消化器官の一部としての役割をもっていると同時に、体全体ともつながっていることを再確認することが重要です。歯周病が口のなかに限局しているだけでは、それほど大きな問題にはならないのですが、長期間慢性化することによって、病原性をもった細菌が血液中に入ったり、飲み込まれて口から離れた心臓や肺などの遠隔(えんかく)臓器に行き着き、そこに病気を起こす可能性が高くなります(図31)。
 したがって、歯周病を予防したり、コントロールすることは、単に歯や口の健康を守るのみならず、全身の健康をも守ることにつながり、人生80年の高齢社会を豊かで快適に過ごすために極めて重要となることを理解しましょう。
 以下、それぞれの病気についてみていきます。