義歯とは

 歯科医療関係者は「入れ歯」を「義歯」と呼びます。失われた足や手、眼を人工物で補う義足(ぎそく)や義手(ぎしゅ)、義眼(ぎがん)と同様に、義歯は自分の歯に代わる人工の歯を意味します。義足は「入れ足」などと呼ばれませんが、義歯が一般的に入れ歯と呼ばれる理由は、足を失う人の数に比較して歯を失う人が圧倒的に多く、義歯を入れる(歯科用語では装着する)人も多いので、身近なものであるためと考えられます。
 ちなみに平成11年の歯科疾患実態調査では、65歳以上では90%を超える人が1本以上の歯を失っており、85歳以上では60%の人がすべての歯を失っています。

義歯の構造

 歯ぐきをおおう部分は床(しょう)、人工の歯は人工歯(じんこうし)と呼ばれます。義歯を支えるために歯に架ける構造体は維持装置と呼ばれ、数多くの種類がありますが、一般的な義歯には針金様の鈎(こう)(クラスプ)が用いられます。

義歯の種類

 上あごの入れ歯は上顎義歯(じょうがくぎし)、下あごは下顎義歯(かがくぎし)と呼ばれ、下顎義歯には舌が入るためのスペースが必ず設けられています。すべての歯を人工の歯に置き換えた義歯は総義歯(そうぎし)(フルデンチャー、コンプリートデンチャー)または全部床義歯(ぜんぶしょうぎし)、一部分の義歯は部分床義歯(ぶぶんしょうぎし)(パーシャルデンチャー)または局部床義歯(きょくぶしょうぎし)と呼びます。
 自分自身で簡単に取り外しができるものは可撤性義歯(かてつせいぎし)と呼ばれ、一般的に入れ歯と呼ばれるものはこの範疇に入ります。固定されているものを固定性義歯と呼び、ブリッジ(架工義歯(かこうぎし))はこの一種です。
 その他、義歯の材料や維持装置による分類もあり、床の一部分を金属でつくるものは金属床義歯、維持装置が鈎のものはクラスプ義歯(クラスプデンチャー)と呼ばれます。

就寝時の義歯の取り扱い

 夜間には、原則として義歯(入れ歯)は外して洗浄液に入れて保管してください。その際には入れ歯用歯ブラシで洗うようにしましょう。
 1日使った入れ歯には、目に見えなくても汚れがついています。入れ歯の材料であるレジン(プラスティック)はカビが繁殖しやすく、除菌を怠ると、口臭や味覚異常、歯ぐきの違和感や痛みの原因になります。また、入れ歯は乾燥すると変形・変色したり、ひび割れが起こることがあります。
 保管容器に入れ歯洗浄剤を入れると、入れ歯の臭いや微生物、茶渋、ワインなどの着色などを落とすのに効果があります。
 就寝時は唾液の減少により口のなかに微生物が多くなり、入れ歯を汚してしまいます。また、入れ歯の装着によって粘膜は圧迫や変形を受けるので、就寝時には粘膜を休ませてあげましょう。しかし、あごにずれがあったり、噛み合わせのバランスが悪かったりして、治療のために入れ歯を入れている人は、歯科医の指示に従ってください。
 夜外しておくと、翌朝はめた時に少し違和感がありますが、すぐに慣れてきます。朝起きてすぐに入れ歯をはめるようにしましょう。

義歯の清掃について

 食後には、入れ歯の内側や外側に食べかすがたまるので、原則として毎食後入れ歯を外して掃除をすることが必要です。入れ歯の掃除が不十分だと、汚れによって独特の臭いが生じます。また、残っている歯のむし歯や歯槽膿漏(しそうのうろう)の原因になります。
 流水下で義歯用ブラシ(古い歯ブラシでも結構です)で、入れ歯の外側・内側・バネをこすり洗いしてください。この時、通常の歯みがき剤は入れ歯がすり減ってしまうので、使用しないでください。ただし、義歯専用と表記してあるものは問題ありません。入れ歯だけでなく、残っている歯もきれいにみがいてください。とくにクラスプの架かっている歯は汚れやすくなっているので、十分に掃除しましょう。
 水を張った洗面器の上で洗えば、誤って落とした時でも入れ歯が壊れたり、留め金が変形する心配が少なくなります。入れ歯の表面がヌルヌルする時や臭いが気になる時は、義歯用洗浄剤に所定の時間浸けておくのもよい方法です。