味覚について

 味覚は甘味(あまみ)、塩味(しおみ)、酸味(さんみ)、苦味(にがみ)の基本4要素からなるといわれていましたが、最近では旨味(うまみ)を加えて基本5要素としています。


 味覚を感じる器官は味蕾(みらい)と呼ばれ(図1)、そのほとんどは舌の表面の乳頭(にゅうとう)(糸状(しじょう)乳頭を除いた有郭(ゆうかく)乳頭、葉状(ようじょう)乳頭、茸状(じじょう)乳頭)という組織に存在しますが(図2)、咽頭粘膜などにも認められます。味覚の感じ方には部位により差があるといわれていましたが、最近の研究では、甘味、塩味、酸味、苦味の4要素はそれほど差がなく、旨味のみは、舌の側面、付け根の部分で強く感じるとの報告もあります。
 これらの味覚を司(つかさど)る神経は、舌の部分により異なっています。また、味覚は嗅覚(きゅうかく)と密接に関連しており、嗅覚が低下すると味覚も変化してきます。これが風味と呼ばれるゆえんともいえます。

味覚障害の原因

 味覚障害はさまざまな原因で引き起こされます。味を感じる経路は、「味物質の味蕾への到達」「味蕾での知覚」「中枢への伝達」に分けられ、これらのどこで障害があっても、味覚障害は引き起こされます。
 味覚障害の原因の内訳は、研究者により異なりますが、特発性、薬剤性、亜鉛(あえん)欠乏性、全身疾患、口腔疾患、心因性などが多いとされています。
 味を感知する味蕾の味細胞には亜鉛が必要とされるため、血中亜鉛の低下は味覚障害を引き起こす大きな原因になります。実際、薬剤による味覚障害は、多くの場合、亜鉛と薬剤がキレート化合物(金属原子1個に対して、2個以上の配位子が結合した複素化合物)を形成し、亜鉛の低下を生じるためと考えられています。
 特発性や全身疾患のなかにも、亜鉛の低下を認めるものや亜鉛製剤の投与で改善効果のみられる例が多くあることから、亜鉛欠乏によるものが7割を占めるとの報告もあります。血中亜鉛が正常値であっても味覚障害が生じ、亜鉛製剤の服用が効果を示す場合もあります。
 亜鉛欠乏を予防するには、亜鉛を多く含んだ食品(牡蛎(かき)、カズノコ、煮干し、海藻、きなこ、レバーなど)を食べることが推奨されますが、市販のサプリメントで補充するのもひとつの方法です。
 口腔の乾燥や感染などが起こり、舌苔(ぜったい)や舌炎、その他口腔内に炎症が生じた場合などでも、味覚低下や味覚異常が引き起こされます。鉄欠乏性貧血による舌炎では、鉄剤の服用が効果的です。そのほか、うつ病などによる心因性のものもあります。