食道がん(上皮性)<食道・胃・腸の病気>の症状の現れ方

 食道がんは症状が出にくいので、食べ物が飲みにくいなどの嚥下(えんげ)障害が現れた段階では、進行食道がんであることが多くなります。
 早期の段階で診断するには、粘膜がんの状態で発見することが必要ですが、この段階ではほとんどの症例に自覚症状はみられません。粘膜がんの状態で治療されるような症例は、上部消化管内視鏡検査を含めたスクリーニング検査で発見されています。たとえば、人間ドックや検診で胃の異常を指摘され、内視鏡検査を受けた際にたまたま食道に発赤粘膜やわずかな凹凸病変などを指摘された人たちです。
 ほかの消化管がんでも同じですが、今日では粘膜がんであれば内視鏡で治療できるようになっています。ところが、進行がんになればリンパ節郭清(かくせい)を含めた手術が、患者さんの予後向上のためには必要になります。
 食道がんでは、胸腔内・腹腔内・頸部(けいぶ)切開による3領域のリンパ節郭清を伴う胸部食道切除と、胃または大腸による28cmくらいの長さの代用食道の作成が必要であり、これが食道がん外科手術の基本操作ですが、患者さんにとっては大きな侵襲(しんしゅう)となります。
 そのため、できるだけ早期の段階で、がんを診断することが最も求められます。また、がんの深達度(しんたつど)(食道壁内のがん浸潤(しんじゅん)の深さ)が予後に影響するので、その診断が重要です。

食道がん(上皮性)<食道・胃・腸の病気>の診断と治療の方法

 食道がんの治療法としては、低侵襲性(患者さんに優しい)の内視鏡による粘膜切除術から、放射線・化学療法さらには外科手術(鏡視下あるいは開胸・開腹)と多くの選択肢があります。しかし、治療法の選択基準はすべて、がんの進行度によります。
 がんの進行度は、がん深達度とリンパ節転移の有無、そしてほかの臓器(肺、肝臓、骨など)への転移の有無で決定されます。とくに、がんの深達度が大きな要素となります。食道の壁の構造(図16)は、伸展した状態で3〜4mmの厚さです。この厚さのうち、どこまでがんが達しているかで治療方針を決めるので、正確ながんの深達度診断が重要です。
 がん深達度の診断には、ルゴール液などの色素を用いた食道内の精密内視鏡検査による、がん表面のわずかな凹凸からの診断、EUS(超音波内視鏡)・CT・MRIによる診断が行われています。それぞれに特徴があり、病巣の深さによって選択されています。
 日本における深達度の浅い症例(粘膜がん)での治療成績をみると、内視鏡的粘膜切除術と外科手術の成績に差はみられません。したがって、現在では粘膜内の浅いがんに限れば、内視鏡治療が第一選択とされています。
 粘膜層を超える深達度が推定される症例では、CT・MRI・EUSでリンパ節転移の有無と分布を把握し、個々の症例に応じた個別の治療方針をたてます。
 初めから外科手術を選択するか、放射線化学療法(CRT)を選択するか、CRT後に効果のある症例には外科手術を行うか、あるいはそのままCRTを継続するかは、食道がん治療の専門学会でも2009年現在、まだ最終的な結論は得られていません。
 実際には、それぞれの治療法の成績、合併症、後遺症について詳しく患者さんに説明し、最終的には患者さんご自身に決定してもらうことが多いです。
 さらに進行し、食道周囲臓器への直接浸潤がみられた症例に対しては、以前は積極的に外科的な合併切除が行われた時代もありましたが、労力の割には患者さんの負担が大きく、予後の改善が得られないという結論が得られており、今日では消極的です。