胃ポリープとはどんな病気か

 ポリープの語源は、ギリシア語のpolupous(“多くの足”の意)に由来します。臨床の現場では、基本的に良性の隆起性病変を指す肉眼的な名称として使われています。日本消化器病学会は胃ポリープを、「胃粘膜上皮(いねんまくじょうひ)の異常増殖に基づく胃内腔に突出した病変」と定義しています。胃ポリープで、臨床上多く見かけるものは、腺腫性(せんしゅせい)ポリープ、過形成性(かけいせいせい)ポリープ、胃底腺(いていせん)ポリープの3つです。
 腺腫性ポリープは良悪性境界病変に相当し、一般には胃腺腫(いせんしゅ)と呼ばれます。高齢の男性に多く、肉眼的には扁平な花壇状、菊花状隆起で色調は褪色で蒼白にみえます。前がん病変と考えられており、2cm以上になると約半数にがんの合併があります。
 過形成性ポリープはやや女性に多く、大きさや形態は限局性の発赤した小隆起から、茎(くき)をもつ大きなものまでさまざまです。まれにがん化します。
 胃底腺ポリープは、米粒大の正色調の小さな無茎(むけい)ないし亜有茎性(あゆうけいせい)の隆起性病変です。中年の女性によく起こり、がん化せず、しばしば自然に消失します。

原因は何か


(1)腺腫性ポリープ

 背景粘膜に強い萎縮(いしゅく)がみられることから腸上皮化生粘膜(ちょうじょうひかせいねんまく)(胃の粘膜が腸の粘膜様に性質が変化すること)から発生すると考えられていますが、詳細な病因は不明です。
(2)過形成性ポリープ
 びらんによって起こる粘膜の欠損に対する上皮の代償的過形成に起因すると考えられています。ヘリコバクター・ピロリという細菌の感染が多いことから、胃粘膜の萎縮と腸上皮化生粘膜が本ポリープの好発する胃粘膜環境であるとも考えられています。
(3)胃底腺ポリープ
 背景粘膜には萎縮がなく、酸の分泌が盛んです。ヘリコバクター・ピロリの関与は否定的です。女性ホルモンやガストリン(消化管ホルモンの一種)の関与も指摘されていますが、はっきりした原因は不明です。

症状の現れ方

 いずれの胃ポリープにも、特有の自覚症状はありません。多くは無症状で、X線や内視鏡の検査で偶然に発見されます。大きくなった過形成性ポリープは、まれに消化管出血の原因になります。
 胃底腺ポリープは、萎縮の少ない胃酸分泌が盛んな胃粘膜に多く発生することから、過酸症状(上腹部痛、胸やけ、しゃっくり)を自覚することがあります。

検査と診断

 診断は、内視鏡検査によって組織の一部を採取して調べる生検を行うことが原則ですが、肉眼的な形態からもある程度は可能です。

治療の方法


(1)腺腫性ポリープ

 腺腫のがん化と同時に、背景となる胃粘膜が分化型腺がんの発生環境と共通するため、離れた部位のがんの合併を常に念頭においておく必要があります。1年に1回は定期的な経過観察を行い、経過観察中に増大傾向を示すもの(2cm以上)や、肉眼的形態からがんの合併が疑われる場合は、診断的治療目的で内視鏡を用いて切除することが多くなっています。
 大きくなってがん化しても、ほとんどが粘膜内がんであるため、大きさにかかわらず生命の予後は良好です。
(2)過形成性ポリープ
 小さなものは治療の必要はありません。大きさや形態の変化はまれではなく、時に自然に消えてなくなる例もみられます。また最近ではヘリコバクター・ピロリの除菌によって消失する例が報告されています。
 切除の対象になる例としては、肉眼で見てがんの合併が疑われるもの、出血性のもの、十二指腸へ落ちこむものなどがあげられます。がん化した場合でもほとんどが粘膜内がんであるため、生命の予後は良好です。
(3)胃底腺ポリープ
 過酸症状に対して酸分泌抑制薬の処方が必要になることがありますが、ポリープそのものに対しての治療は必要ありません。

胃ポリープに気づいたらどうする

 1cmを超える腺腫性ポリープ、過形成性ポリープは定期的な経過観察が望まれます。経過観察中に大きくなってくるようなら、医師と相談のうえ、内視鏡を用いた切除を考慮してください。いずれのポリープでも、小さなものならば放置してもまず問題はありません。