直腸粘膜脱とはどんな病気か

 腹圧および排便により、下部直腸の粘膜が肛門下部へ押し下げられた状態です。このような粘膜には、脱出したままのものと、排便時にだけ脱出するものとがあります。内痔核の脱出に伴う場合が多く、痔核(じかく)、脱肛(だっこう)と間違えられやすいのですが、熟練した肛門科の専門医であれば容易に診断できます。

原因は何か

 脆弱(ぜいじゃく)な骨盤底、とくに会陰下垂症(えいんかすいしょう)に伴うことが多くみられます。また便秘症など、排便習慣によって誘発されることも少なくありません。

症状の現れ方

 内痔核脱肛に伴う症状と同様で、粘液のもれ、肛門出血、肛門の掻痒感(そうようかん)、肛門の不快感を来します。とくに肛門の重圧感、会陰深部の腫瘤感(しゅりゅうかん)(しこりがある感じ)を訴えます。残便感を訴える場合も多くみられます。

検査と診断

 粘膜が脱出したままの場合は診断がつきますが、外来の大部分の患者さんでは常に脱出した粘膜はみられず、肛門鏡、直腸鏡による診察が重要です。下垂する粘膜は発赤、ただれ、潰瘍、出血を伴うことが多くみられます。肛門科医による熟練した判断が診断を左右します。
 この場合もやはり、悪性疾患との区別は重要です。疑わしい場合は生検による組織学的検査が必要です。

治療の方法

 一般的な治療は、排便時に腹圧をかけないように指導することと、坐薬などによる局所療法を行います。過度な腹圧や排便回数を減らすことが重要です。
 十分な治療効果が現れない場合は、痔核根治術に準じて、粘膜切除術を行うか、肛門の縁に傷をつけない環状自動縫合器を用いた粘膜切除法(PPH法)などを行います。最近では、硫酸アルミニウム・タンニン酸注射(ALTA)を用いた内痔核硬化療法による治療も増えてきています。
 外科的治療により病状は軽くなりますが、正常な排便習慣を身につけないと再発します。

直腸粘膜脱に気づいたらどうする

 直腸粘膜脱に気づいた場合、またはその疑いがある場合は、よく似た症状、病態を示す他の疾患(直腸脱内痔核(ないじかく)、脱肛(だっこう)、直腸孤立性潰瘍(ちょくちょうこりつせいかいよう))との区別のため、肛門科の医師か大腸肛門病専門の病院を受診し、正しい診断をしてもらうことが大切です。間違って痔核と診断され、改善しない場合が多くみられます。