痔瘻(肛門周囲膿瘍)とはどんな病気か

 直腸、肛門部の感染症です。昔は結核(けっかく)による病気とされていました。直腸、肛門周囲にうみがたまった段階を肛門周囲膿瘍といい、たまったうみが排出され、結果として直腸、肛門と交通のある難治性の管ができてしまうと痔瘻といいます。

原因は何か

 直腸と肛門の境の歯状線(しじょうせん)には、深さが1mm程度の小さなくぼみ(肛門陰窩(いんか))が肛門全周で6〜11個、平均で8個あります。


 体の抵抗力が弱っていて下痢をした場合などに、この小さなくぼみに下痢便が入り込むと、便のなかの大腸菌がこの小さなくぼみに連絡する肛門腺という腺組織に感染を引き起こします。その腺組織の感染が原因となって、うみが直腸・肛門周囲に広がっていき、肛門周囲膿瘍となります(図16)。
 たまったうみが自然に破れるか切開されるかして排膿されると、結果として歯状線の小さなくぼみを入り口とし、肛門腺の感染部をうみの元とする、直腸・肛門と交通のある管が形成されます。
 このように、一度うみの管ができあがると(つまり痔瘻になると)、それは肛門と交通し、なおかつうみの入り口(うみの元)があるために、自然には治りません。

症状の現れ方

 肛門周囲膿瘍になってうみがたまると、39℃からひどい時は40℃以上の発熱となります。うみがたまった部分が腫脹(しゅちょう)し、皮膚表面が発赤する場合もあります。また、夜も寝ていられないほどの激しい痛みが生じます。
 表に破けたり、肛門のなかに破けて出口ができればうみが出て、腫脹、痛み、発熱などの症状はなくなります。うみの出口ができると、そこから排膿して下着が汚れたりします。出口がふさがって治ったかと思っていると、またうみがたまって破け、うみが出るということを繰り返します。

治療の方法

 肛門周囲膿瘍では、一刻も早く切開して排膿します。肛門の周囲の皮膚、もしくは直腸肛門内の粘膜に切開を加え、たまったうみを外に出します。切開し、十分にうみの出口をつくったところで抗生剤、鎮痛薬を投与します。
 その後、外来でしばらく経過を観察し、痔瘻を形成するようなら手術を行います(まれに抗生剤で膿瘍が消退し、治る場合もある)。
 手術の方法は、基本的にはうみの管を切り開いてうみの入り口、うみの元を切除するというものです。しかし、この手術の仕方では瘻管(ろうかん)の走る深さ、部位によって括約筋(かつやくきん)の切開が大きな犠牲となって、痔瘻が治ったあとで肛門がいびつになったり、筋肉の締まりが悪くなってしまうことがあります。
 そのため痔瘻のタイプによっては、括約筋をなるべく残しながら痔瘻のうみの入り口、うみの元を除去する括約筋温存手術を行います。

痔瘻(肛門周囲膿瘍)に気づいたらどうする

 肛門周囲膿瘍では一刻も早く医師を受診し、切開排膿を受けることです。我慢していたり、市販の鎮痛薬などでごまかしていてはいけません。うみを広げ、病気を進展させ複雑にしてしまいます。
 医師を受診するまでの応急処置としては肛門部を冷やすことです。入浴したりして温めてはいけません。温めるのは一時的に痛みを緩和させますが、あとでかえって化膿を進める結果になります。
 痔瘻は手術でなければ治らないので、基本的には手術になります。すぐに受診できなかったり手術のための入院ができない時は、下痢をしないように注意します。下痢は痔瘻の原因であり、症状を悪化させるので、アルコール、暴飲、暴食を避けます。
 肛門部を温湯で洗い清潔にしておくことも、痔瘻を治さないまでも痔瘻により生じる症状の緩解に役立ちます。