C型急性肝炎とはどんな病気か

 C型肝炎ウイルス(HCV)による急性の肝障害です。HCVが血流を介して肝臓に浸入し、そこで急激に増殖するため、リンパ球を中心とした免疫細胞が肝臓に炎症(肝炎)を起こします。
 約30%の患者さんではHCVが自然に排除され、肝炎は治癒します。しかしHCVは“RNAウイルス”でその遺伝子は変異しやすいことが知られており、ヒトの免疫システムをすり抜け、約70%の患者さんではウイルスの持続感染(慢性化)がみられます。
 慢性化すると20〜30年後に高率に肝硬変(かんこうへん)、肝がんへ移行することが知られているため注意が必要です。ただ、C型急性肝炎自体は重症化することが少なく、致命率の高い劇症肝炎となることは非常にまれです。

症状の現れ方

 現在では輸血後にC型急性肝炎が起きることは非常にまれですが、血液製剤中のHCVを検査できなかった時代(1991年以前)には多数みられました。このような過去の例を検討すると、C型急性肝炎では、肝臓の大部分が破壊され黄疸(おうだん)や褐色尿(かっしょくにょう)(コーラやウーロン茶様)がみられるような症例は比較的まれであり、血液中の肝逸脱酵素(いつだつこうそ)(ALTやAST)の軽度上昇(1000IUmlまで上昇しないことが多い。A型あるいはB型急性肝炎ではピーク時には1000IUmlを超し、時には2000IUml以上となる)のみで確認され、本人の自覚症状もない場合が多数あることが知られていました。
 通常ウイルスに暴露(ばくろ)後14〜180日(平均45日)で症状が出ると考えられています。食欲不振や全身倦怠感(けんたいかん)なども、他の急性肝炎に比べ軽いのが特徴です。おおよそ20%の患者さんでかぜのような症状がみられますが、新規発生の患者さんでは倦怠感、腹痛、強い食欲不振あるいは黄疸などの強い症状はみられなかったとの報告もあります。

検査と診断

 前述したように症状が軽いため、血液検査の肝逸脱酵素の値の上昇が唯一の手がかりとなることも多いです。発症後しばらくの間は血中HCV抗体は陽性化せず、HCV RNAのみが陽性であることが多いため、より感度の優れたHCV RNA測定検査(現在はリアルタイムRT‐PCR法による検査が最も高感度)を行うことが重要です。C型慢性肝炎との鑑別のためにはHCV抗体とHCV RNAの同時測定が必要です。
 重症度の判定は、プロトロンビン時間(血液の固まりやすさの指標)、T‐BIL(黄疸)、アンモニア(肝性脳症、意識状態)、腹水、発熱症状など、肝不全の程度で判定します。

治療の方法

 C型急性肝炎の治療は、その慢性化の阻止(そし)(ウイルスの持続感染化防止)に尽きます。急性肝炎では重症化・劇症化することもあるため入院治療を原則としますが、C型急性肝炎では症状・検査値も軽いため、多くの場合入院が不要です。しかし前述したように高率で慢性化するため、肝不全兆候を認めない場合には、慢性化を阻止するために積極的に治療を行います。
 1991年に、日本の小俣らはC型急性肝炎はインターフェロン治療によって80〜90%の確率でウイルスが駆除できるという研究結果を世界で初めて報告しました(ランセット誌)。一方、未治療の場合は逆に約80%が慢性化(ウイルス感染持続)するということも明らかになりました。それ以降、インターフェロンとリバビリンとの併用療法などが、ワクチンのないC型肝炎の慢性化阻止の切り札となりました。肝臓の破壊を推定する目安のひとつであるALT(GPT)やAST(GOT)などのトランスアミナーゼが高値の場合、肝庇護(かんひご)薬(強力ネオミノファーゲンCなど)の静脈注射などをすることがありますが、治療の目的はあくまでもウイルスの駆除です。

病気の予防

 C型肝炎を予防するワクチンはありませんが、インターフェロン治療により慢性化の阻止が極めて効率よく可能となりました。現在では、輸血や医療行為で感染することも非常にまれとなっています。
 覚醒剤などの回し打ちや消毒不十分な針を用いた刺青(いれずみ)などで、針を介してHCV感染が起きることがあります。また近頃若者に人気のあるファッション刺青やピアスなどでも、不潔な針を用いた場合、HCV感染が起きる可能性があります。患者さんのなかにはC型肝炎の感染機会がはっきりしない人もいます。
 なお、母児感染や夫婦間感染は、臨床上問題視されていません。
 発熱、倦怠感、尿黄染、灰白色便、腹痛、食欲不振、吐き気、嘔吐、関節痛、黄疸などの症状のある方や、前述のことが心配な方は、肝臓専門医のいる医療機関を受診し、検査を受けてください。