自己免疫性肝炎とはどんな病気か

 病気の発症や進行に自己免疫、つまり患者さん自身の免疫反応が深く関与して発症する慢性的な肝炎です。患者さん自身の免疫細胞が、患者さんの肝細胞を攻撃し障害を与えていることが考えられますが、詳細な肝細胞障害の発症機序(仕組み)は明らかになっていません。また、多くの患者さんの血液中に、自分の細胞を異物とみなす“自己抗体”と呼ばれる抗体が検出されます。
 男女比は1対7で女性に多く、40〜50代で発症することが多い病気です。
 2005年の疫学調査からは、全国で自己免疫性肝炎の患者さんは約9500人と推定されています。日本では少数ですが、10代や高齢で発症する患者さんもいます。
 この病気の多くには副腎皮質ステロイド薬が有効ですが、治療を行わないと肝硬変に進行することがあります。肝障害の進行を抑えるためにも早期診断・早期治療が望まれます。

原因は何か

 詳細は不明ですが、患者さん自身のリンパ球が肝細胞と免疫反応を起こしてしまうことが原因ではないかと考えられています。このような免疫異常が起こる誘因として、薬剤の使用やウイルスの感染が関与するといわれています。
 一般に、自己免疫性肝炎は遺伝しないと考えられています。

症状の現れ方

 自己免疫性肝炎に特徴的な症状はありませんが、病院を初めて受診する際に、約60%が倦怠感(けんたいかん)を、35%が黄疸(おうだん)を訴えています。そのほかの症状として、食欲不振、関節痛、発熱があげられますが、無症状の人もいます。中年の女性で上記の症状に肝障害を伴う場合は、自己免疫性肝炎を疑う必要があります。
 また、関節リウマチ慢性甲状腺炎(まんせいこうじょうせんえん)など、ほかの自己免疫疾患の合併も多く認められます。
 肝臓がんの合併はウイルス肝炎に比べて少ないとされています。

検査と診断

 自己免疫性肝炎の診断にあたっては、肝炎ウイルス、アルコール、薬物の関与する肝障害や、ほかの自己免疫疾患に基づく肝障害を除外することが必要です。
 血液検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇が認められ、重症の場合はビリルビン値の上昇もみられます。免疫異常もみられ、血中γ(ガンマ) ‐グロブリンが増加し、IgG値が高値を示します。自己免疫疾患に認められる抗核抗体が90%以上の患者さんで検出され、他の自己抗体も陽性になることがあります。
 以上の検査で自己免疫性肝炎が強く疑われた場合は、肝臓の組織を一部採取し、組織学的に診断を行います。

治療の方法

 自己免疫性肝炎の特徴として、多くの患者さんにおいて副腎皮質ステロイド薬が著効を示すことがあげられます。通常、プレドニゾロン(プレドニン)を1日30〜40mgで治療を開始します。その後、血液データを観察しながら5mgずつ減量していき、1日5〜10mgまで減量したところで、これを維持量として長期に継続して内服してもらいます。80%以上の患者さんで症状の改善が得られますが、なかにはステロイド薬が効きにくい患者さんもいます。
 治療に際しての問題点は、ステロイド薬の副作用にあります。多量のステロイド薬を長期にわたり使用すると、糖尿病骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、易(い)感染性(感染症にかかりやすくなること)、消化性潰瘍(胃潰瘍)などを来すことがあり、十分な注意が必要です。ステロイド薬の副作用が心配な時は、アザチオプリン(イムラン)を併用するとステロイド薬の投与量を半分に減らすことができます。ただし、アザチオプリンを併用する時は、骨髄抑制(こつずいよくせい)などの副作用に注意する必要があります。
 自己免疫性肝炎はステロイド薬が有効なら予後は比較的良好ですが、無効例では肝硬変に至り亡くなられる人もいます。最近、軽症例にはウルソデオキシコール酸(ウルソ)の投与も試みられています。

自己免疫性肝炎に気づいたらどうする

 自己免疫性肝炎の発病は一般的には緩やかであり、症状も軽微なことが多いとされていますが、治療を行わないと肝硬変に進行することがあります。幸いなことに、多くの患者さんでステロイド薬によりその進行を止めることが可能な場合が多いので、病気の早期診断・早期治療が大切です。
 また、自己免疫性肝炎の患者さんは、ステロイド薬を急に中止すると肝炎が再燃してしまうことがあるので注意が必要です。
 全身の倦怠感が持続する人、皮膚や眼球の黄染(おうせん)に気づかれた人は血液検査を受け、肝障害が認められたら肝臓専門医あるいは消化器病専門医を受診することをすすめます。

関連項目

 原発性胆汁性肝硬変B型慢性肝炎C型慢性肝炎