門脈圧亢進症とはどんな病気か

 門脈系統の血液の流れの異常によって生じる門脈圧が上昇した状態で、これに伴う食道(しょくどう)・胃静脈瘤(いじょうみゃくりゅう)、脾腫(ひしゅ)、腹水(ふくすい)など二次的に現れる病的症状を含む概念です。したがって、門脈圧亢進症は単一の病気を指すものではなく、いろいろな病気が含まれ、圧亢進の発生機序(仕組み)もさまざまです。
 門脈は腹腔内臓器(胃および腸、膵臓(すいぞう)、脾臓(ひぞう)および胆嚢(たんのう))の毛細血管からの静脈血を集め、脾静脈、上腸間膜(じょうちょうかんまく)静脈、下腸間膜(かちょうかんまく)静脈などの静脈を介して肝臓に流入します(コラム)。
 門脈は、肝臓内に入ると多数の分枝に別れて、これと併走する動脈といっしょになって肝細胞間の類洞(るいどう)(洞様血管)に流入します。そして、血液は肝細胞との物質の交換を行ったあとは末梢の肝静脈に流出し、大きな3本の肝静脈に集められ、下大静脈を介して心臓にもどっていきます。


 門脈圧亢進症を起こす病気は、この門脈血行のどこかに流通障害が生じることにより発生します。これをわかりやすく図9に表します。
 門脈圧亢進症を来す病気には肝硬変(かんこうへん)(進行した慢性肝炎を含む)、特発性門脈圧亢進症(とくはつせいもんみゃくあつこうしんしょう)、肝外門脈閉塞症(かんがいもんみゃくへいそくしょう)、バッド・キアリ症候群日本住血吸虫症(にほんじゅうけつきゅうちゅうしょう)などがありますが、日本では90%以上が肝硬変によるものです。

症状の現れ方

 通常は、基礎となる病気の症状が先行し、のちに脾腫による腹部膨満(ぼうまん)、脾機能亢進(ひきのうこうしん)による血球破壊のために生じる貧血、食道静脈瘤破綻(はたん)による吐血・下血などの症状が現れます。時には突然、食道・胃静脈瘤の破綻による吐血で発症します。

検査と診断

 基礎となる病気が不明な場合には、肝機能検査、各種の画像検査(超音波検査、血管造影、CT、MRIなど)により診断を確定します。
 基礎となる病気が明らかになれば、いずれの病気でも食道・胃静脈瘤の有無と、その静脈瘤が破綻しやすいかどうかを診断する必要があるため、食道・胃静脈瘤についての内視鏡検査が最も重要で、早急を要します。
 日本門脈圧亢進症学会では、食道・胃静脈瘤に対する内視鏡記載基準を作っていて、客観的に評価できるようになっています。

治療の方法

 その病態から生じる二次的な病態(静脈瘤、腹水、脾腫など)に対する対症療法が主体です。その中心は食道・胃静脈瘤に対する治療で、これには予防的治療、待機的治療、緊急的治療があります。
 予防的治療とは、破綻しそうな静脈瘤(内視鏡により判断)に対して行います。待機的治療とは、破綻出血後、時期をおいて行うものです。緊急的治療とは破綻出血している症例に止血を目的に行う治療です。
 静脈瘤の治療は、1980年ころまでは外科医による手術治療が中心でしたが、最近では内視鏡を用いた治療(内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮(けっさつ)療法)が第一選択として行われています。
 内視鏡的硬化療法には、直接、静脈瘤内に硬化剤を注入する方法と、静脈瘤の周囲に硬化剤を注入し、周囲から静脈瘤を固める方法があります。いずれも静脈瘤に血栓形成を十分に起こさせることにより、食道への副血行路を遮断するのが目的です。
 静脈瘤結紮療法は、ゴムバンドを用いて静脈瘤を壊死(えし)に陥らせ、組織を荒廃させ、結果的に静脈瘤に血栓ができることが目標となります。
 最近では内視鏡的静脈瘤結紮療法が、手技が簡便なことから多くの施設で行われており、急性出血の治療には良い結果が得られていますが、静脈瘤の消失を目的にする時は硬化療法が併用されています。
 これらの治療には、副血行路の状態をみるために、血管造影や超音波を用いた検査が行われます。胃静脈瘤に対しては血管造影を用いた塞栓(そくせん)療法も用いられます。また、門脈圧を下げるような薬剤を用いた治療、手術が必要な症例もあり、これには副血行路の遮断や血管の吻合術(ふんごうじゅつ)が行われます。