胆石症<肝臓・胆嚢・膵臓の病気>の症状の現れ方


(1)胆嚢結石
 胆嚢に結石があっても多くの場合は無症状で、症状が出るのは胆嚢結石のある方の20%程度といわれています。上腹部の違和感や腹部膨満感など、胃や腸の症状と区別が難しい症状を訴えることが多いのですが、胆嚢結石に特徴的な症状は胆石疝痛(せんつう)と呼ばれる腹痛です。これは脂肪分の多い食物をとったあとに起きる上腹部、とくに右季肋部(きろくぶ)(右の肋骨(ろっこつ)の下)あたりの周期的な痛みで、背中や右肩のコリや痛みを伴うことがあります。
 この症状は胆嚢結石が胆嚢の出入り口をふさいだり胆嚢管に詰まったりして、胆汁の流れを妨げることにより起きます。その状態で胆嚢内に細菌が感染すると、高熱を出します(急性胆嚢炎)。なお、特殊な状況を除き、胆嚢結石で黄疸(おうだん)になることはありません。

(2)胆管結石
 胆嚢結石とは異なり、胆管結石の多くは何らかの症状を伴い、無症状の方は10%程度とされています。胆管内の結石により胆汁の十二指腸への流れが妨げられ、腹痛(とくにみぞおち)、発熱などの症状が出ます。また、胆管内にたまった胆汁が血液中に逆流すると、黄疸を来します。日本人の皮膚はもともと黄色いので、よほどひどい黄疸でなければ肌が黄色くなったのに気づきませんが、そうなる前に尿の色がウーロン茶のように茶色くなります。
 さらに胆汁中の細菌が胆汁と一緒に血液に入り込む(敗血症(はいけつしょう)、菌血症(きんけつしょう))と、悪寒(おかん)を伴う高熱や意識障害、ショックを来し、極めて危険な状態になります(急性閉塞性化膿性胆管炎(きゅうせいへいそくせいかのうせいたんかんえん))。適切な処置をしなければ死亡する危険性があります。なお、高齢者では、腹痛を訴えずに急に高熱や意識障害を来す可能性があるため、注意が必要です。
 また胆管結石は、急性膵炎(すいえん)の最も多い原因です。これは胆管結石が胆汁の出口(十二指腸乳頭)にはまり込んだり、また結石が十二指腸に出た時に乳頭がむくんだりすることで、膵液の十二指腸への流れを妨げて膵炎を起こします。急性膵炎の症状としては心窩部(しんかぶ)(みぞおち)痛や背部痛、嘔吐(おうと)などがあります。

胆石症<肝臓・胆嚢・膵臓の病気>の診断と治療の方法


(1)胆嚢結石
 胆嚢結石に伴う何らかの症状がある方は治療の適応となります。無症状の方の多くは定期的な検査(年に1〜2回程度の腹部超音波検査)を受けることが望ましいですが、積極的な治療の対象にはなりません。
 ただし無症状の方でも、(1)胆嚢の壁が厚くなっている、(2)胆嚢が縮んでいる(萎縮(いしゅく)している)、(3)胆嚢内の大きな結石や多数の結石のため腹部超音波検査で胆嚢の壁を正確に評価することができない、(4)胆嚢の壁が全体に石灰化している(陶器様胆嚢)、などの所見が認められる場合は治療の対象となります。

a.胆嚢摘出術
 胆嚢結石治療の第一選択となっている治療法です。とくに腹腔鏡下胆嚢摘出術は世界的な標準的治療法で、従来の開腹胆嚢摘出術と異なり、おなかの傷が小さく、手術後の回復も早く、早期に退院・社会復帰が可能です。ただし胆嚢の炎症のため周辺の臓器(肝臓や腸管など)と癒着している場合や、胃の手術を受けたことのある方では、開腹胆嚢摘出術を行わざるをえないことがあります。
 胆嚢を残して結石だけをとれないかという疑問をもつ方もいますが、結石だけをとるほうが胆嚢ごと摘出するよりもむしろ手間がかかりますし、結石ができるような胆嚢が病気のもとであるわけですから、胆嚢摘出術は胆嚢結石の根治的な治療といえます。
 また胆嚢を摘出した後の影響を懸念される方がいます。しかしほとんどの方においては日常生活にまったく影響ありません。脂肪分の多い食事を大量に摂取したあとに下痢を起こすことがまれにありますが、整腸剤などで対応可能です。

b.胆石溶解療法
 胆嚢の機能が保たれていて、大きさが1cm程度の石灰化していないコレステロール系結石が対象となります。ウルソデオキシコール酸を含む薬剤を内服して結石を溶解します。手術と異なりこの治療法には、体への負担がほとんどない、胆嚢を残せる、などの利点があります。一方で長期間(数カ月〜数年)にわたって毎日薬を内服する必要があり、また結石が消失するのは30〜50%で、消失しても数年で30〜50%の方が再発すると報告されています。

c.体外衝撃波結石破砕療法
 体外から衝撃波を当てて結石を細かく砕く治療法です。胆嚢の機能が保たれていて、結石の大きさが2cm以下で数が1個のコレステロール系結石が対象となります。胆石溶解療法を併用することもあります。結石の消失率は60〜80%と報告されていますが、この治療には特殊な装置が必要なため、どこの病院でも行えるわけではありません。

(2)胆管結石
 無症状の胆嚢結石とは異なり、胆管結石は、たとえ無症状でも将来的に重症の急性胆管炎急性膵炎を起こす危険性があるため、原則として治療の対象になります。その治療法は内視鏡的治療法と外科的治療法に分かれますが、最近では体への負担がより少ない内視鏡的治療が主流になってきています。

a.内視鏡的治療法
 内視鏡を使って胆管から結石を取り出すためには、まず十二指腸乳頭を広げておく必要があります。この方法には電気メスで乳頭を切開する内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)(図19)と、風船(バルーン)で乳頭を広げる内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)(図20)があります。
 内視鏡的治療の経験が豊富な施設では、いずれかの方法を用いて90%以上の方で結石を完全除去することができます。ただし、結石が大きくて数が多い場合には1回の内視鏡的治療ではすべての結石を取りきれず、複数回の治療を要することがあります。
 ESTとEPBDのどちらが良い治療法なのかは、現在でも議論の分かれるところです。EPBDに比べESTのほうが乳頭を大きく広げるので、大きな結石を取り出すのはESTのほうが簡単です。ただし、ESTは乳頭を切開する手技ですので術後の出血や十二指腸に穿孔(せんこう)(孔(あな)があく)の危険性がありますが、EPBDは単にバルーンで乳頭を広げるだけなので出血や穿孔の心配はほとんどありません。術後の急性膵炎の頻度はESTとEPBDで同等か、EPBDで多いと報告されています。また、胆汁の流れを調整する乳頭の機能は、EST後には高度に低下あるいは廃絶しますが、EPBDではある程度温存されます。

b.外科的治療法
 内視鏡的治療が胆管結石の標準的治療法となる十数年前までは、多くの施設では開腹手術が第一選択の治療法でした。しかし開腹してメスで胆管を切開して結石を取り出す治療法は、内視鏡的治療に比べると明らかに体への負担は大きく、現在では、内視鏡的に除去することが困難な胆管結石が開腹手術の対象となってきています。
 腹腔鏡下で胆管結石を取り除く治療法は、開腹手術に比べ体の負担が少なく、また一度の手術で胆嚢結石と胆管結石の治療ができるという点で有用な治療法です。しかし非常に高度な技術を要し、安全に行える施設は限られているのが現状です。