遊走腎とはどんな病気か



 臥位(がい)(寝た姿勢)での腎臓の高さに比べ、立位で2椎体(ついたい)(約10cm)以上腎臓の位置が下垂(かすい)する状態を指します。本症は内臓下垂の部分症状と考えられています(図4)。

原因は何か


(1)先天的要因 腎臓は腎線維被膜(じんせんいひまく)に包まれ、その外側に腎周囲脂肪からなる脂肪被膜があり、さらに外部を腎筋膜(Gerota筋膜)という膜がおおっています。この病気は、これら腎臓を支えている周囲の組織が弱いために生じます。

(2)後天的要因 腹筋の弛緩、腹圧低下に加えて、腎周囲脂肪組織の低下があげられます。いずれにしても、立位では肝臓など重量に富む臓器の荷重負荷がかかるなどの要因から、右腎は左腎と比較して下垂しやすくなっています。

症状の現れ方

 臥位・座位などによりおさまる腰痛、側腹部痛、腰背部痛を訴えることが多く、その多くは鈍痛で、立位歩行や荷重などで、症状が悪化します。
 血尿は、腹痛と並んで遊走腎でよくみられる症状で、通常は目に見えない顕微鏡的血尿が主体です。肉眼的血尿がみられることもありますが、血尿により貧血を生じることはありません。また立位で背中を反る体位をとった時に、軽微な蛋白尿(たんぱくにょう)を認めることもあります。
 尿路症状として頻尿(ひんにょう)、残尿感、排尿痛などの膀胱刺激症状を訴える人もいますが、遊走腎による特異的症状とはいえません。そのほか食欲不振、吐き気、下痢、便秘、胃部膨満感(ぼうまんかん)などを訴えることもあります。

検査と診断

 臥位と座位における腎臓の触診と、静脈性尿路造影での臥位と座位での腎臓の位置の比較が診断の中心となります。
 静脈性尿路造影では、立位負荷をかけた時の腎臓の下垂の程度に加えて、腎臓の回転、捻転、偏位および腎盂(じんう)・腎杯(じんぱい)の形態変化などを観察します。

治療の方法

 遊走腎は症状がない場合はそのまま経過観察し、上記のような症状がある場合でも、原則的に保存的治療を優先すべきです。重い病気ではなく、腎不全にはならないことを理解することが重要です。
 保存的治療としては、やせている人は腎周囲の脂肪を増加させ、腎臓の支持・補強を行うため体重を増加させます。
 また、理学療法として腹筋・背筋力強化のための運動療法を行うとともに、コルセットや腹帯などを用いて腹壁の緊張を保持します。
 遊走腎に対する単独の手術として腎固定術が行われることは、極めて少数です。

遊走腎に気づいたらどうする

 泌尿器科を受診し、専門医からこの病気について説明を受け、治療法に関して相談をしてください。