前立腺がん<男性生殖器の病気>の症状の現れ方

 前立腺がんは前立腺の外腺の腺上皮から発生する率が高く、初期にはほとんど症状がありません。がんが大きくなって尿道が圧迫されると、尿が出にくい、尿の回数が多い、排尿後に尿が残った感じがする、夜間の尿の回数が多いなど、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)と同じ症状が現れます。
 がんが尿道または膀胱に広がると、排尿の時の痛み、尿もれや肉眼でわかる血尿が認められ、さらに大きくなると尿が出なくなります(尿閉)。精嚢腺(せいのうせん)に広がると、精液が赤くなることがあります。さらにがんが進行すると、リンパ節や骨(脊椎(せきつい)や骨盤骨)に転移します。リンパ節に転移すると下肢のむくみ、骨に転移すると痛みや下半身麻痺(まひ)を起こすことがあります。

前立腺がん<男性生殖器の病気>の診断と治療の方法

 まず、がんの進み具合や悪性度別の治療方針について説明し、そのあとで各治療法について述べます。

(1)進展度、悪性度別の治療表4

a.高分化がん(G1、グリソンスコア3+3=6)
 限局がんの場合は前立腺全摘出術(全摘)、小線源(しょうせんげん)療法(放射線療法)が第一選択ですが、内分泌療法も有効なので、どれを選択しても生命予後には影響しません。限局がんでもさらに初期の場合は無治療、厳重な経過観察も選択可能です。

b.中分化がん(G2、グリソンスコア3+4or4+3=7)
 限局がんの場合は、全摘あるいは小線源療法、外照射(がいしょうしゃ)療法(放射線療法)が第一選択です。内分泌療法をまず行い、再度生検で効果を確認したあとで治療法を選択することも可能です。局所浸潤がんの場合は、内分泌療法後に放射線療法を行うのが一般的です。進行がんの場合は内分泌療法が第一選択です。

c.低分化がん(G3、グリソンスコア4+4=8以上)
 限局がんの場合は、全摘が絶対的適応です。局所浸潤がんでは、内分泌療法と抗がん薬療法を行い、さらに放射線療法を併用します。進行がんでは、内分泌療法、放射線療法、抗がん薬療法を併用しますが、予後は不良です。
 75歳以上の高齢者では、前立腺の全摘の代わりに、放射線療法を選択するのが一般的です。このように悪性度、進展度、患者さんの状態によりさまざまな治療法の選択肢がある一方で、どれを選んだらよいか迷う場合があります。この場合、セカンドオピニオンといって他の専門医の診察を受け意見を求めることもできます。

(2)主な治療法と副作用

a.内分泌(ホルモン)療法表5
 男性ホルモンの作用を低下させることを目的として、LH‐RHアナログ製剤を皮下注射する方法が一般的です。中止すると男性ホルモンは元にもどります。精巣(せいそう)摘出術(去勢術)では同じ効果が一生続きます。最近では、これらに抗男性ホルモン薬を加えたMAB療法が一般的です。
 内分泌療法を続けるといわゆる更年期障害が現れ、発汗異常、性欲の減退が認められます。内分泌療法としては女性ホルモン薬も使われますが、電解質の代謝異常、心電図の異常、肝機能障害、性欲の減退、女性化乳房などの副作用が起こることがあります。

b.外科療法(前立腺全摘出術)
 がんが前立腺内に限られている時、手術により精嚢腺を含む前立腺全体を摘出してがんを取り除く方法です。下腹部あるいは会陰部(えいんぶ)を切開して行う方法に、最近は腹腔鏡による治療法やさらにロボトミィ手術も行われてきています。入院期間は約3週間で、原則として輸血に備えて自己血貯血(ちょけつ)を行います。合併症には、尿失禁、勃起不全(ぼっきふぜん)などがあります。

c.放射線療法
 高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す方法です。近年、放射線治療技術が進歩し、陽子線や重粒子線を使用したり、IMRT(強度変調放射線治療)や3D(三次元原体照射)の使用で副作用を減らし、治療効果の改善が得られています。
 また、これまでの外照射療法のほかに、小線源療法といって前立腺に放射線を出す小さな線源を埋め込む方法があります。副作用は、排尿痛、血尿、直腸からの出血などがみられます。

d.化学療法(抗がん薬)
 内分泌療法が効きにくい低分化がんや、再発・再燃した時に行う治療法です。抗がん薬として現在は一般的にドセタキセルが使用され、一定の効果が認められていますが、効果が続く期間が短いという欠点があります。副作用としては、手足のしびれ、骨髄機能の低下などがあります。

e.その他の治療法
 ビスホスフォネート製剤…もともと高カルシウム血症の治療に使われていた薬ですが、前立腺がんの骨転移の痛み、骨折の軽減などに有効なことが解ってきました。点滴で投与します。
 ストロンチウム療法…ストロンチウムが体内でカルシウムと同じはたらきをすることから、ストロンチウムの放射性同位元素を投与して、骨転移の痛みを和らげる治療です。放射性物質のため治療のできる施設が限られます。

(3)再発と再燃
 治療によりいったん低下したPSA値が再び上昇したり、局所の再発、リンパ節または他臓器に新たに転移がみられた場合、再発といいます。最初から進行がんと診断され、内分泌療法を中心に治療し、いったん低下したPSA値が再び上昇した場合を再燃といいます。再発・再燃に対する標準的な治療法はまだ定まっていません。どのがんもそうですが、再発あるいは再燃したら根治治療は難しいのが現状です。

(4)治療成績と予後
 前立腺がんは早期発見例が増加したことと、内分泌療法が有効なため、他のがんと比べると治療成績と予後は比較的よいがんといえます。
 5年生存率は、限局がんでは90%以上、局所浸潤がんで70〜80%、進行がんで40〜50%です。とくに、限局がんでも高分化、中分化がんでは5年生存率は100%近くになります。最新の情報はインターネットなどで得られます。