精巣腫瘍とはどんな病気か

 精巣にできる腫瘍(おでき)です。悪性腫瘍、いわゆるがんであることが多く、早期発見・早期治療が大切です。頻度としては10万人に1〜2人のめずらしい病気ですが、15〜35歳くらいの若い人に多く、この年代の男性にできる悪性腫瘍のなかでは最も多いがんです。


 進行が速く容易に他の臓器に転移するので、放っておくと命に関わることのある怖い病気です。しかし最近では、治療法の進歩により9割以上の人が完治するようになりました(図4)。転移を起こしてしまった人でも適切な治療を行えば7〜8割の人が治りますが、進行した状態では治療が困難な場合もあるので、おかしいなと思ったら恥ずかしがらずに早めに泌尿器科を受診することが大切です。

原因は何か

 なぜがんができるのか、本当の原因はまだわかっていません。ただ、停留精巣(ていりゅうせいそう)や、精巣発育不全などの病気をもっている人は、精巣のがんになりやすいといわれています。

症状の現れ方

 痛みもなく、熱もなく、ある日気がつくと陰嚢(いんのう)のなかの精巣の一部がいつもより硬くごつごつしていたり、全体的にはれて大きくなってきて気づきます。痛くもないし病院で見せるのが恥ずかしいと、はれたのに気づいても医者に行かないで放っておく患者さんも多くいらっしゃいます。このため、病気がかなり進行しておなかがふくらんできたとか、咳(せき)が出て胸が苦しくなったなど、精巣腫瘍の転移による症状のために病院を受診し、しかも精巣がはれていることを申告してくれないため原因がわからずに泌尿器科以外の科にかかり、他の治療を受けたのちに精巣腫瘍が原因だったとあとでわかることも実際にある話です。また、精巣に痛みを伴う患者さんも1割くらいはいますので、痛いからがんではない、というわけではなく注意が必要です。

検査と診断

 泌尿器科の医師が診察すれば、触っただけで、ほとんどの場合診断がつきます。ただし、判断に迷う場合もあり(コラム)、懐中電灯をあてて中身が詰まっているかどうか調べたり、超音波で腫瘍の内部を検査します。
 診断が確定すればすぐに血液検査で腫瘍マーカーを調べ、細かい検査は後回しにしてできるだけ早く精巣を腫瘍とともに摘出する手術をします。かつては受診した当日に緊急手術をしていた時代もありましたが、治療法が進み治りやすくなってきたため、そこまでの緊急性はありません。しかし急激に進行する場合もあるので、できるだけ早期に治療を開始する必要があります。
 精巣摘出と前後して、がんが他の臓器に転移していないかどうかを詳しく調べます。転移する部位として多いのは肺やリンパ節で、肝臓や骨、脳などに転移することもあります。このため全身のCTやアイソトープを使った検査が行われます。

治療の方法

 まず精巣を腫瘍ごと摘出します。陰嚢を切開せず、おなかの下のほうに傷ができるやり方で、高位除精巣術(こういじょせいそうじゅつ)(高位除睾術(こういじょこうじゅつ))と呼ばれます。精巣は左右一対ありますから、片方を摘出しても、もう一方が正常に機能していれば精子は十分作られますので、不妊症にはなりません(精巣腫瘍の患者さんは、残すほうの精巣でも精子を作る能力が元来低下している場合がありますが)。また、精巣の機能として男性ホルモンを作る能力も重要ですが、こちらもひとつで十分ですから勃起能(ぼっきのう)などが衰えることはありません。
 検査によって転移が見つかった場合、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンという3種の抗がん薬による治療が追加されます。1回5日間の点滴を3〜4週間おきに繰り返すやり方で、病状にもよりますが3〜4回行うことが標準的です。セミノーマという種類のがんの場合は放射線治療も有効です。


 これらの治療で転移があるような進んだがんの患者さんでも7〜8割の人が完治するようになりました。逆にいうと残りの2〜3割の人は通常の治療法では完治しにくいので、薬を変えたり、量を増やしたり、手術を追加したりといろいろな手段をつくして完治をめざします。また、転移が見つからないような初期のがんの人でも、将来2〜3割に転移が現れるので、予防的な抗がん薬投与や放射線治療を行う場合があります。転移のある患者さんの、私たちの施設での治療方針を図5に示します。

精巣腫瘍に気づいたらどうする

 恥ずかしがって病気が進行してしまっては、大変なことになります。泌尿器科の医師や看護師は、毎日陰茎や精巣を見慣れているので、あなたのはれ上がった精巣を見ても何ともありません。おかしいなと思ったら、大病院でなくてもけっこうですから泌尿器科を受診してください。

関連項目

 陰嚢水腫急性精巣上体炎急性精巣炎外鼠径(がいそけい)ヘルニア