どんな病気か、原因は何か



 腎臓が糖尿病による高血糖に長年さらされることにより、腎臓の濾過(ろか)機能を担う糸球体(しきゅうたい)が損なわれる病気です。腎症の病期は、主な臨床症状の有無により第1期から第5期に分類されています(表4)。
 当初は、高血糖のため、むしろ糸球体濾過量は増加していますが、糸球体のなかの血圧が高くなり(糸球体高血圧)、糸球体の毛細血管からの血漿(けっしょう)蛋白質(アルブミン)の透過性(とうかせい)が高まって、アルブミン尿が出てきます。腎症がさらに進むと、もっとサイズの大きい蛋白も排泄されるようになり、蛋白尿になります。蛋白尿が高度になると低蛋白血症になり、糸球体濾過機能の減少と相まって浮腫が起こってきます(ネフローゼ症候群と呼ばれます)。さらに進行すると、体内の老廃物や水分、塩分の排泄が損なわれ、腎不全状態(尿毒症(にょうどくしょう))になり、最終的には血液透析(とうせき)か腎移植が必要になります。
 病理組織学的には、糸球体のメサンギウム領域(糸球体の毛細血管を支える間質)に細胞外基質蛋白(さいぼうがいきしつたんぱく)が沈着したり、一部は結節状になってきます(糖尿病腎硬化症(じんこうかしょう))。

症状の現れ方

 当初は無症状です。腎症が進んで蛋白尿が高度になると低蛋白血症となり、浮腫が起こってきます。浮腫は、全身、とくに下肢にみられます。水分貯留が高度になり、胸水や腹水が生じると、体を動かす時の息切れや胸苦しさ、食欲不振や腹満感が現われてきます。
 腎不全期には、貧血のため顔色が悪くなり易(い)疲労感が現れ、尿毒症のため吐き気あるいは嘔吐もみられます。低カルシウム血症のために筋肉の強直(きょうちょく)や疼痛がみられることもあります。腎不全末期になると、肺水腫(はいすいしゅ)・心不全のため、浮腫や息切れ、動悸(どうき)がひどくなり、出血傾向、手の震え、意識混濁などの尿毒症症状が現われてきます。

検査と診断


(1)尿検査

 コラム「糖尿病腎症の診断」を参照してください。
(2)血清クレアチニン濃度・尿素窒素(ちっそ)濃度
 血清クレアチニン濃度や尿素窒素(BUN)濃度は腎機能障害を示す指標になります。血清クレアチニン濃度の基準値は、男性では0・6〜1・2mgdl、女性では0・4〜0・9mgdlです。ただ、注意しないといけないことは、血清クレアチニン濃度が基準値を超えて上昇した時には、腎機能がすでに健常者の2分の1以下に低下していることです。
(3)クレアチニンクリアランス
 クレアチニンクリアランスは、血清や尿中のクレアチニン濃度を測ることにより、糸球体濾過量(GFR)を推測する指標です。最近では、血清クレアチニン濃度と年齢からGFRを計算式で求めて、eGFRを推定できるようになりました。基準値は90〜130ml分です
(4)その他の血液検査
 腎症が進行し腎不全期になると、さまざまな異常が現れます。血液検査では、総蛋白やアルブミン濃度、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどの電解質を測定する必要があります。また尿酸値も高くないかどうかチェックします。貧血の検査も必要です。

治療の方法

 何よりも腎症の発症を予防するために、良好な血糖コントロールが重要です。早期腎症の早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。厳格な血糖コントロールと血圧管理は、尿中アルブミン排泄量を減少させます。
 高血圧合併例では食塩は6g未満日とします。腎糸球体高血圧(じんしきゅうたいこうけつあつ)を改善するアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬がすすめられます。
 血圧は13080mmHg未満を目標とし、蛋白尿が1g日以上の場合には12575mmHg未満を目標とします。
 第3期(顕性腎症期)や第4期(腎不全期)になると、食事中の蛋白制限が重要で、蛋白質摂取量は第3期では0・8〜1・0gkg日、第4期(腎不全期)では0・6〜0・8gkg日とします。

糖尿病腎症に気づいたらどうする

 糖尿病の患者さんは、血糖値だけでなく、尿検査でアルブミンや蛋白が出ていないかどうかにも注意をはらってください。もし、微量アルブミン尿が出ているようなら、血糖のみならず血圧も厳格にコントロールしてください。蛋白尿だと言われたら、食事中の蛋白制限が必要になるので、栄養士による食事指導を受けてください。
 血清クレアチニン濃度が2〜3mgdlを超えるようになったら、腎臓の専門医の診察を受けることをすすめます。

関連項目

 腎臓の病気