成人のアトピー性皮膚炎とはどんな病気か

 乾燥肌による敏感肌にアトピー素因が重なって発症する慢性の皮膚炎です。アトピー性皮膚炎は、昔は子どもの皮膚疾患で、成長して思春期くらいになると自然におさまると考えられていましたが、20年前くらいから、思春期にいったん良くなった皮膚炎が20歳前後になって再び悪化してきたり、思春期になっても治らず、さらに成人になってもアトピー性皮膚炎が続く患者さんが増えてきました。
 それから、小さい時には少しあせもができやすかったとか、冬に肌が少し乾燥する程度だったのに、大人になってからアトピー性皮膚炎ができるようになったという例もあります。

原因は何か

 思春期に増えた皮脂が再び減ってくることによる肌の乾燥のために、汗や衣服との摩擦(まさつ)など日常の暮らしのなかでのありふれた刺激で皮膚炎を生じます。ダニやほこり、花粉などに対するアレルギーが関係していることもあります。かぜや過労、寝不足やイライラなどのストレス、不規則な生活、女性では月経前も皮膚炎を悪化させるきっかけになります。

症状の現れ方

 全身の皮膚の乾燥に加えて、毛穴が盛り上がった鳥肌のような丘疹(きゅうしん)が固くなり、全体にザラザラした皮膚になります。丘疹はかくのを繰り返すうちに固くなり、大豆大ほどの痒疹結節(ようしんけっせつ)になることもあります。四肢や背部、首、胸にみられる皮膚炎は慢性化して厚くなります。顔では額や目のまわりに紅斑(こうはん)がみられ、次第に顔全体に広がり、時にじくじくと湿ってきます。症状は上半身に強い傾向があり、いずれも強いかゆみを伴います。
 顔面の症状が悪化して顔をたたくことを繰り返すと、白内障(はくないしょう)、網膜剥離(もうまくはくり)などの眼の症状が併発することがあります。

検査と診断

 血液検査でIgEの濃度を調べることによって、ダニ、ほこり、花粉などアレルギー反応によって皮膚炎を悪化させる物質の見当をつけることができます。ただしIgEが陽性であったものが実際の皮膚炎の悪化に本当に関係があるかどうかは、医師と相談して慎重に判断する必要があります。
 アトピー性皮膚炎の経過中に、口唇(こうしん)にヘルペスウイルスによる小さな水疱(すいほう)ができたあと顔全体に広がるカポジ水痘様発疹症(すいとうようほっしんしょう)や、外用薬などによる接触皮膚炎を併発することがあるので、急に症状が悪化したり、いつもの治療法では軽くならない時は、皮膚科を受診しましょう。

治療の方法

 白色ワセリンやヘパリン類似物質外用薬(ヒルドイドソフト)などの保湿剤を入浴後に塗り、皮膚炎にはステロイド薬を塗ります。皮膚炎が軽くなっている時でも保湿剤の外用は続けて、調子のよい状態を保つようにします。かくのが止まらない時には、患部にステロイド薬を塗ったあと亜鉛華(あえんか)単軟膏を布に伸ばしたものを貼って包帯で巻くのも有効です。また、抗ヒスタミン作用のあるかゆみ止めの内服も効果的です。
 ステロイド薬とは異なる免疫調整薬タクロリムス(プロトピック)は、顔や首など塗り薬が吸収されやすい場所を中心に、皮膚炎とかゆみを緩和する作用があります。

成人のアトピー性皮膚炎に気づいたらどうする

 デリケートな肌は衣服がこすれるくらいの弱い刺激でもかゆみや皮膚炎につながるので、肌触りのよい柔らかな木綿の素材のものが好適です。ダニやほこりに対するアレルギー反応でかゆみや皮膚炎が悪化することがあるので、部屋はこまめに掃除をして、ほこりのたまりやすいものをたくさん部屋に置かず、部屋を閉めきらずに風通しをよくします。
 夜更かしや寝不足が続くと皮膚の調子にも悪影響を及ぼすので、なるべく規則正しい生活をします。またイライラしたりストレスがたまってくるとかく回数が増えることが多いので、上手に気分転換をすることも大切です。
 塗り薬は、でき始めの軽い皮膚炎にはよく効きますが、慢性化して固くなってくると効きにくくなります。また皮膚炎があるために、汗や摩擦(まさつ)などの刺激にますます敏感に反応して一段と皮膚炎を起こしやすくなり、かゆいところをひっかくことで皮膚炎がさらに悪化するといった悪循環を防ぐためにも、皮膚炎は軽いうちに対処するようにします。