がん前駆症(ボーエン病/日光角化症(老人性角化腫)/白板症)とはどんな病気か

 それ自身がかなり高い確率で将来がんに移行しうるものを「がん前駆症」あるいは「前がん状態」といいます。狭義には「表皮内(ひょうひない)がん」と同じであり、ボーエン病、日光角化症(老人性角化腫)、白板症などが含まれます。
 また、やけどの傷跡(熱傷後瘢痕(ねっしょうごはんこん))や放射線治療後の皮膚(慢性放射線皮膚炎(まんせいほうしゃせんひふえん))などはそれ自体悪性ではありませんが、将来そこにがんを生じやすい局所的要因になりうるため、広義のがん前駆症に含めることもあります。
 全身的な発がん要因を先天性と後天性に分けることも可能です。先天性の疾患としては色素性乾皮症(しきそせいかんぴしょう)と疣贅状(ゆうぜいじょう)表皮発育異常症(いじょうしょう)が代表的です。前者は日光紫外線によるDNAの傷を治せないことが原因であり、顔面などに皮膚がんが多発します。後者はHPV(ヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス)に生まれつきかかりやすい患者さんであり、全身にイボが多発するとともに皮膚がんを生じてきます。
 後天性な全身的要因としては慢性砒素中毒(まんせいひそちゅうどく)、あるいは、免疫不全状態にあるエイズの患者さんや、臓器移植を受けた患者さんなどがあげられます。

原因は何か


(1)ボーエン病

 日光紫外線、HPV、放射線や砒素などが原因になります。また、青壮年者の外陰部に多発するボーエン様丘疹症(きゅうしんしょう)は、ボーエン病と組織像が酷似する良性のHPV感染症です。しかし、子宮頸(けい)がんにみられるのと同じ型のHPV感染のため、子宮頸がんの合併あるいは遅れての発症に注意する必要があります。
(2)日光角化症
 高齢者の顔面などの露光部に好発することから、日光紫外線、とくに中波長紫外線によってDNAに傷ができることがその原因と考えられています。
(3)白板症
 義歯やたばこなどによる慢性の刺激が原因と考えられています。

症状の現れ方


(1)ボーエン病

 高齢者の体幹や四肢に好発する境界のはっきりした径数cmの褐紅色斑で、一部盛り上がったりかさぶた(痂皮(かひ))がついています。また、多発例も10〜20%程度ありますが、砒素による場合は、手のひらと足の裏の角化、体の色素沈着と点状白斑、爪の線状色素沈着などの皮膚症状がみられ、皮膚以外にも肝がん肺がん膀胱がんなどの内臓悪性腫瘍を合併します。
(2)日光角化症
 黄褐色のかさぶた(痂皮)を伴う径1〜3cmの紅褐色局面のことが多く、皮膚がぼろぼろむけます。また、治ったようにみえたりするのを繰り返すのも特徴です。なお、下口唇に生じたものを日光口唇炎、陰部先端(亀頭(きとう))に生じたものを紅色肥厚症(こうしょくひこうしょう)と呼んでいます。
(3)白板症
 こすっても落ちない口腔または外陰部粘膜の白くふやけたようにみえる局面です。また、悪性化してくると周囲に発赤を伴うようになったり、盛り上がってイボ状になります。

検査と診断

 ボーエン病では慢性湿疹や尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)(皮膚病のひとつ)など、日光角化症ではイボ(脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)あるいは尋常性疣贅(ゆうぜい))など、白板症ではカビの一種であるカンジダ症などとまぎらわしいことがあります。また、疑わしい場合は皮膚生検を行います。

治療の方法

 外科的切除が原則で、高齢者や多発例では液体窒素による凍結療法やCO2レーザー照射なども行います。また、取り残しがないことや再発の有無をみるため、治療後も定期的な経過観察が必要です。

がん前駆症(ボーエン病/日光角化症(老人性角化腫)/白板症)に気づいたらどうする


(1)ボーエン病

 かゆみのない褐紅色斑ができているのに気づいたら、一度皮膚科専門医を受診してください。また、以前から指摘されているほど、内臓悪性腫瘍の合併は多くありません。なお、多発している患者さんでは、砒素中毒や疣贅状表皮発育異常症などを除外するための検査も必要です。
(2)日光角化症
 一見正常にみえる皮膚も日光紫外線のダメージをすでに受けているので、新たな病巣を生じないためにも、サンスクリーンを使用するとともに帽子などで直射日光を避けるようにしてください。
(3)白板症
 新たな刺激を避けるため、とくに喫煙する患者さんは禁煙を厳守してください。