血管肉腫とはどんな病気か

 広義の血管(脈管)肉腫すなわち血管の悪性腫瘍は、(1)悪性血管内皮細胞腫(あくせいけっかんないひさいぼうしゅ)、(2)悪性血管外皮(けっかんがいひ)細胞腫、(3)カポジ肉腫に分類されます。
 さらに、(1)の悪性血管内皮細胞腫は高齢者の頭部に好発する血管肉腫と乳がん根治術後のリンパうっ滞に起因する血管肉腫の2つに、(3)のカポジ肉腫は古典型、アフリカ型、医原性型(あるいはエイズ型)の3つに細分されます。また、狭義の血管肉腫は、それらのなかで最も頻度が高い、高齢者の頭部に好発する血管肉腫を指します。
 なお、本項は紙面の関係で狭義の血管肉腫すなわち高齢者の頭部に好発する血管肉腫について記載します。

原因は何か

 約半数の患者さんでは頭をドアで打ったなどのけがの既往があることから、打撲などの外的刺激がその誘因に取り上げられています。なお、皮膚では頭部のみに生じ、そのほとんどは経過中に血行性転移による血気腫(けっきしゅ)などの肺病変を高頻度に合併する一方、初期にはその他の臓器への転移を生じることがほとんどないことから、誘因を契機に頭部皮膚と肺に同時多発性に血管肉腫が生じるとの考えもあります。

症状の現れ方

 高齢者の前頭部から前額部皮膚にかけて好発し、当初は淡紅色から暗紅色の打ち身様皮疹(紫斑(しはん))や紅斑としてみられ、次いで浮腫を伴うようになり、さらには、皮膚表層の欠損(びらん)による出血やかさぶた(血痂(けっか))を生じるようになります。
 また、さらに進行するとその紫斑や紅斑のなかにもち上がり(結節)を生じたり、あるいは、一部崩れて潰瘍をつくったりします。

検査と診断

 特殊な検査法あるいは診断法はなく、臨床症状から血管肉腫を疑って皮膚生検することで診断します。しかし、ほくろのがんと同様に悪性度が高いため、生検により転移を誘発する可能性を指摘する説もあります。
 また、血中の第8因子関連抗原、トロンボモジュリン、VEGF(血管内皮成長因子)、エンドセリンなどが病勢を反映することがあります。

治療の方法

 範囲が小さければ、紫斑や紅斑などの肉眼的病巣から十分離して外科的切除を行いたいところですが、目、鼻、耳などの重要な器官を巻き込むと現実的には不可能になります。そこで、放射線療法とインターロイキン2(IL‐2)治療、さらには、多剤併用化学療法などを併用します。
 また、これらの治療は紫斑性または紅斑性病変には有効ですが、盛り上がった病変にはほとんど効果がないため、可能なかぎり隆起性病変の切除を行います。
 しかし、患者さんが高齢のため侵襲(しんしゅう)の大きな治療を行いにくいことなどから局所再発率は高く、さらには、早期に肺転移を生じて血気胸(けっききょう)を来しやすいなど、その予後が不良なのも事実です。

血管肉腫に気づいたらどうする

 早期に発見して、盛り上がる前の初期病変の時に治療を開始するのが第一であることから、けがの既往の有無にかかわらず、高齢者の頭部や顔面に紫斑ないし紅斑局面を見つけたら、皮膚科専門医を受診してください。