急性灰白髄炎(ポリオ)とポリオ様疾患とはどんな感染症か

 急性灰白髄炎(ポリオ)は、ポリオウイルスの中枢神経組織への感染によって引き起こされる急性ウイルス感染症で、一般的には小児麻痺(しょうにまひ)としてよく知られています。ポリオウイルスはエンテロウイルスに属するRNAウイルスで、1、2および3型に分けられます。経口感染したポリオウイルスは、主に腸管で増殖し、便のなかに多くのウイルスが排泄されます。
 日本ではワクチン接種の普及により、1960年代初頭の大流行以降、ポリオの流行は起こっていません。1988年に世界保健機関(WHO)によって世界ポリオ根絶計画が提唱され、その結果、世界のポリオ患者数は激減しています。日本を含む西太平洋地域では、2000年にポリオ根絶が宣言されました。2009年におけるポリオ流行国は、ナイジェリア、インド、パキスタン、アフガニスタンの4カ国にまで減少しており、近い将来、世界的なポリオ根絶が期待されています。

症状の現れ方

 脊髄前角(せきずいぜんかく)細胞へのポリオウイルス感染による四肢を中心とした急性弛緩性(しかんせい)麻痺が典型的なポリオの臨床症状で、呼吸筋麻痺によって死に至る場合もあります。ポリオによる不可逆的な運動神経麻痺によって一生ハンディキャップを背負う子どもも少なくありません。
 ポリオウイルスに感染したすべての人が発症するわけではなく、典型的なポリオ発症の割合は感染者の1%以下で、ほかの多くの感染者は無症状か夏かぜのような軽い症状のみで回復します。

検査と診断

 急性弛緩性麻痺と呼ばれるポリオ様疾患は、ポリオウイルス以外のエンテロウイルスやギラン・バレー症候群によって発症する場合も多いため、臨床検体からのポリオウイルスの分離同定により確定診断を行う必要があります。発症後すぐに便を採取して、細胞培養でウイルスを分離したあと、中和法によりポリオウイルスの同定を行います。
 ポリオウイルスが分離された場合は、遺伝子解析などの方法によってワクチン株(後述のワクチンによるもの)か野生株かの判別を行います。

治療の方法

 市販されている治療薬はないので、発症後は対症療法およびリハビリテーションが重要になります。安全性と有効性に優れた予防法として、ポリオワクチンが全世界で使用されています。ポリオワクチンには、大きく分けて弱毒化生(じゃくどくかなま)ワクチンと不活化(ふかつか)ワクチンの2種類があり、どちらもポリオの発症を防ぐ効果があります。
 安価で投与しやすい弱毒化生ワクチンは日本を含む多くの国で現在も使用されていて、ポリオ根絶に大きな貢献をしています。一方、多くの先進国では、ごくまれに起こる弱毒化生ワクチンによる重い副反応のリスクを減らすために、不活化ワクチンの導入が進められています。

急性灰白髄炎(ポリオ)とポリオ様疾患に気づいたらどうする

 ポリオは感染症法により2類感染症に分類されており、診断した医師はただちに保健所に届け出る必要があります。まれに、弱毒化生ワクチンの副反応によりワクチン接種者や接触者がポリオを発症する場合があります。いずれの場合も、症状からポリオ様疾患が疑われる場合は、発症後できるだけすみやかに適切な臨床検体を採取し、ウイルス分離同定による確定診断を行う必要があります。