エイズ(後天性免疫不全症候群)とはどんな感染症か

 エイズ(後天性免疫不全症候群:AIDS)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって引き起こされる疾患です。HIVには1型と2型がありますが、日本で主に流行しているのは1型です。HIV感染症は性感染症で、男女間あるいは男性同士の性行為により感染します。また、血液を介しても感染することから、感染した母親から出産時に新生児に感染する危険があります。薬物中毒者では血液で汚染した針の使いまわしで感染します。
 HIVは免疫を制御するCD4陽性細胞(T細胞、マクロファージ、樹状細胞など)に選択的に感染し、自らの遺伝子をヒトの遺伝子に組み込みます。その後、感染したCD4陽性細胞を破壊しながら増殖していきますが、一部の感染細胞は破壊されることなく休眠し、ヒトの体内で長い時間潜伏してしまいます。このためHIV感染症は自然に治癒することはありえませんし、薬剤治療でも根治ができません。

症状の現れ方

 HIV感染症に特徴的な症状はありません。感染成立後に起こる急激なウイルス増殖に対する免疫反応として、発熱、倦怠感(けんたいかん)、頭痛、関節痛、発疹、リンパ節の腫大、一過性の末梢血リンパ球低下などの、一般的なウイルス感染症の症状を示すことがありますが、無症状のこともあります。特徴的な所見がないことから、HIVに感染した事実に気がつかないことが多々あります。
 HIV感染症は、5年前後で感染者の免疫力を奪っていきます。この間、無症状で経過することが多いのですが、HIV‐1は生体内で盛んに増殖をするため、血液検査で白血球数や血小板数の減少を認める場合があります。そして、病気の進行とともにCD4陽性細胞数が低下してくると免疫力が奪われて、発熱、倦怠感、食欲不振、吐き気・嘔吐などの症状が出てきます。
 最終的に深刻な免疫不全に陥り、ニューモシスチス肺炎などの日和見(ひよりみ)感染症、悪性腫瘍、認知症などを合併します。このように免疫不全症状を示すようになった状態を、エイズと呼びます。

検査と診断

 診断は血清学的な検査により行われます。血液中にあるHIV‐1の蛋白に反応する特異的抗体、およびHIV‐1抗原自体を検出することによって判定します。
 血清学的診断の問題点は、感染してから特異的抗体が検出されるまでおよそ1カ月かかることです。このため、感染急性期には血清学的診断では判定できないことがあります。この空白の1カ月をウィンドウピリオドと呼んでいます。ウィンドウピリオドの問題は急性感染が見落とされるだけでなく、輸血用血液の汚染の危険性を高めるなど、多くの問題をはらんでいます。
 最近ではこのウィンドウピリオドを短くするために、従来の血清学的診断だけではなく、HIV‐1のRNA(リボ核酸)を増幅検出する方法も併せて利用されています。また、女性の場合、妊娠している時には血清学的検査の擬陽性が出やすく、検査の判定には注意が必要です。

治療の方法

 HIV感染症の治療薬剤は多数開発されていて現在22種類あります。逆転写酵素阻害薬(ぎゃくてんしゃこうそそがいやく)が12種類、プロテアーゼ阻害薬が8種類、インテグラーゼ阻害薬が1剤、そしてHIVが感染するときに利用するCCR5レセプターを狙ったCCR5阻害薬が1剤あります。これらの薬剤を3剤以上組み合わせた多剤併用療法が、標準的な治療法として行われています。
 多剤併用療法は良好な効果をあげており、この治療方法が始まってから、エイズで亡くなる患者さんの数は大幅に減りました。それでも、多剤併用療法でHIV感染症を根治することはできないため、患者さんは生涯薬をのみ続けなければなりません。また、HIVは薬に対して抵抗性(薬剤耐性)を獲得しやすいため、処方された薬を決められたとおり正確に服用しなければなりません。

エイズ(後天性免疫不全症候群)に気づいたらどうする

 もしHIVに感染したのではないかと心配になったら、もよりの保健所あるいは病院に相談してください。保健所では匿名で無料のHIV検査を受けることができます。検査は通常の採血(5ml程度)により行われます。
 なお、献血はHIV検査の代わりにはならないので、注意してください。