麻疹(はしか)とはどんな感染症か

 麻疹ウイルスによる急性熱性発疹性のウイルス感染症です。感染力が極めて強く、死亡することもある重症の感染症です。日本を含めた世界保健機関(WHO)西太平洋地域では、2012年までに麻疹を排除することを目標に決めています。
 空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染、いずれの方法によっても感染し、好発年齢は1歳代が最も多く、次いで6〜11カ月、2歳の順です。近年、成人麻疹の増加が問題となっており、10〜20代での発症が多く報告されています。

症状の現れ方

 10〜12日の潜伏期ののち、発熱で発症します。発熱期は咳(せき)、鼻水、結膜炎(けつまくえん)症状が強く、38℃以上の発熱が数日続きます。病気の経過中、いちばん感染力が強い時期です。その後、いったん解熱傾向を示しますが、すぐに耳後部付近から発疹が現れるとともに、39℃以上の発熱が数日続きます。
 発疹出現前後1、2日間に、口腔粘膜(臼歯(きゅうし)の横付近)に白い粘膜疹(コプリック斑)が現れます。この粘膜疹は麻疹に特徴的であるため、これを確認して麻疹と臨床診断されることがほとんどです。発疹はその後、顔面、体幹、手足に広がって全身の発疹となり、数日後、色素沈着を残して回復に向かいます。
 肺炎中耳炎を合併することが多く、1000人に0・5〜1人の割合で脳炎を合併します。また、麻疹ウイルスに感染後、とくに学童期に発症することの多い中枢神経疾患として、亜急性硬化性全脳炎(あきゅうせいこうかせいぜんのうえん)(SSPE)があります。知能障害、運動障害、ミオクローヌスなどの症状を示し、発症から平均6〜9カ月で死亡する進行性の予後不良な疾患です。発症頻度は麻疹にかかった10万人に1人程度といわれています。

検査と診断

 特徴的な臨床症状で診断されることがほとんどですが、最近はウイルス学的な検査診断が必要と考えられています。急性期に採血し、麻疹に特異的なIgM抗体を証明することで診断されます。
 急性期の血液や咽頭ぬぐい液、尿から麻疹ウイルスを分離したり、RT‐PCR法で麻疹ウイルスの遺伝子(RNA)を検出することでも診断が可能です。この検査は全国の地方衛生研究所(地研)で実施されており、麻疹を疑った場合は、保健所を通して地研に臨床検体を搬送します。地研での実施が困難な場合は、国立感染症研究所で実施します。急性期と回復期に採血して、麻疹ウイルスに対するIgG抗体が陽性に転じたことで診断する場合もあります。
 2008年1月1日から麻疹は、全数報告の感染症となり、診断したすべての医師が最寄りの保健所に1週間以内に(できる限り24時間以内に)届け出ることが義務づけられました。

治療・予防の方法

 ワクチンを接種して発症そのものを予防することが最も重要です。接種時期は、1歳になったらできる限り早く接種することが望まれます。日本では、2006年からMR(麻疹・風疹混合)ワクチンが広く使用されるようになり、2006年6月からは、1歳児と小学校入学前1年間の幼児を対象とした2回接種制度が始まっています。これらの時期に受けるワクチンは、定期接種として通常、無料で接種が受けられます。
 また、2007年の全国的な麻疹流行は10〜20代が中心であったため、国の麻疹対策が大きく変わりました。2008年度から5年間の時限措置として、10代の者への免疫強化を目的に、中学1年生と高校3年生相当年齢の者に対する2回目の予防接種(原則としてMRワクチン)が、予防接種法に基づく定期接種に導入されました。
 発症してしまった場合はウイルスに特異的な治療方法はなく、対症療法だけとなります。肺炎中耳炎を合併することも多く、入院率は約40%といわれています。

麻疹(はしか)に気づいたらどうする

 予防(ワクチン)に勝る治療はありません。ワクチンを接種する前に麻疹の患者さんと接触したことが判明した場合は、接触後48時間以内に麻疹含有ワクチンを接種する、あるいは接触後5日以内にγ(ガンマ)グロブリン製剤の注射を受けることで発症を予防する、あるいは軽くすませる効果があります。ただし、家族内感染の場合は、これらの予防法では間に合わないことがほとんどです。
 発症してしまった場合は、早急にかかりつけの小児科、成人の場合は内科あるいは皮膚科を受診し、入院の必要性を含めて対応を相談することが必要です。