炭疽とはどんな感染症か

 炭疽は草食動物の病気です。ヒトには、感染した動物の体液や肉、被毛、毛皮などから感染しますが、多くは動物を扱う人の職業病と考えられています。ヒトからヒトへの感染はほとんどないとされています。
 炭疽菌という細菌が原因です。この菌は芽胞(がほう)を形成することにより、物理化学的に厳しい条件に抵抗性を示します。感染症法では4類感染症に指定されています。
 日本を含めた多くの先進国では、動物の炭疽もヒトの炭疽も、その発生は極めてまれになっています。しかし、バイオテロに使用されるおそれの最も高い病原体のひとつであるとされているため、注意が必要な病気です。

症状の現れ方

 3つの病型があります。
皮膚炭疽(ひふたんそ)
 皮膚の傷口などから感染した場合です。1〜12日の潜伏期ののち、虫刺されのような丘疹(きゅうしん)が現れ、水疱(すいほう)をへて黒色の潰瘍壊死(えし)に至ります。また、患部の浮腫(むくみ)が認められます。治療しない場合の死亡率は20%程度です。自然感染のほとんどは、この病型です。
腸炭疽(ちょうたんそ)
 炭疽にかかった動物の肉を、調理が不完全なまま食べることで発症します。潜伏期は1〜7日で、しばしば吐血、下痢を伴う腹痛ののち、発熱および敗血症(はいけつしょう)の症状が現れます。治療しない場合の死亡率は25〜60%と考えられています。
肺炭疽(はいたんそ)
 1〜7日の潜伏期ののち、筋肉痛、倦怠感(けんたいかん)、発熱などのウイルス感染を思わせる予兆で始まります。呼吸器症状がある場合もない場合もあります。
 次いで、低酸素症や呼吸困難が現れ、治療しない場合の死亡率は95%に及びます。また、治療しても75%という高い死亡率です。

検査と診断

 皮膚炭疽は、水疱の内容物をグラム染色して顕微鏡で観察すると同時に、培養による分離を行います。肺炭疽ではX線撮影により縦隔(じゅうかく)の拡張がみられるとされていますが、必ずしもすべての例でみられるわけではありません。
 縦隔の滲出液(しんしゅつえき)、痰などから菌の分離を行って確定診断します。虫刺され、類丹毒(るいたんどく)、鼻疽(びそ)、野兎病(やとびょう)、サルモネラ症などとの区別が必要です。

治療の方法

 シプロフロキサシン、ドキシサイクリンなどの薬剤が有効です。ペニシリンも有効ですが、耐性(たいせい)をもつ菌が存在することが知られています。
 肺炭疽の場合は進行が早いので、確定診断以前でも炭疽が疑われる場合には予防的に抗生剤による治療を行います。

炭疽に気づいたらどうする

 医療機関をすみやかに受診し、感染した動物に接触した可能性があればそのむねを告げる必要があります。