糞線虫症とはどんな感染症か

 糞線虫は、長さが2mmほどの糸くずのような虫で、小腸上部の粘膜に寄生します。世界的には熱帯から温帯にかけて広く分布していますが、国内では奄美・沖縄などの南西諸島が主な流行地です。
 感染は土壌中にいる幼虫が皮膚から入ってきて起こり、現在は奄美・沖縄でもほとんどの患者さんは高齢の方ですが、わずかながら小児への感染も報告されています。
 日本の糞線虫症の患者さんは、ほとんどが何十年か前の子ども時代に感染したと考えられています。なぜ、そのような古い感染が今の病気の原因になるかというと、この虫には人体中で世代を重ねる能力があるからです。
 成虫が産んだ卵は腸のなかで孵化(ふか)し、幼虫の一部が皮膚や粘膜からもぐり込んで血液やリンパ液の流れに乗って肺に行き、腸管におりてきて親になります。そしてそれがまた卵を産んで、ということを繰り返して、何十年も感染が持続するのです。
 この性質のせいで、この虫をもっている人が、ステロイド薬や抗がん薬などの免疫機能を抑えるはたらきのある薬の投与を受けると、寄生している虫の数が増え続け、播種性(はしゅせい)糞線虫症という重い病気になります。

症状の現れ方

 寄生数が少ないと症状はありませんが、増えてくるとおなかの張った感じ、下痢、腹痛が現れてきます。さらに重症になると、下痢は水様性になり、吸収障害や腸の粘膜から蛋白質が失われることで体重が減り、むくみが出たりします。
 また、粘膜からの出血による貧血、腸管の麻痺、幼虫による肺炎など、多様な症状が出てきます。幼虫が粘膜からもぐり込む時に腸内細菌を血管のなかに引き入れて、敗血症(はいけつしょう)や髄膜炎(ずいまくえん)を併発することもあります。

検査と診断

 症状のない時には、感度のよい方法で便を検査しなければ糞線虫を見つけることはできません。しかし、この虫が原因で下痢をしている時は、新鮮な便のなかに長さ0・3mm弱の動く幼虫を見つけることができます。
 内視鏡で胃や十二指腸の粘膜を採取して、虫の断面が発見されることもあります。下痢や肺炎などの目立った症状がある時は抗体検査も有効です。
 糞線虫症の流行地は、成人T細胞白血病(ATL)の流行地でもあります。ATLの発症の前に糞線虫症が現れてくることがあるので、糞線虫陽性の人はATLウイルスの感染についても調べる必要があります。

治療の方法

 糞線虫自体は、駆虫薬(くちゅうやく)(ストロメクトール)でほぼ完全に駆虫できますが、低蛋白や貧血、脱水には対症療法が必要で、細菌感染を併発していれば抗生剤を投与します。
 免疫抑制薬の投与を受けている人やATLウイルス陽性の人では完全に駆虫できないことがあり、その時は重症化を防ぐ目的で定期的に駆虫薬の投与を続けていくことになります。

糞線虫症に気づいたらどうする

 糞線虫症は、免疫のはたらきが悪くなると重症化します。重症の糞線虫症は命に関わる病気なので、下痢が続くようなら設備の整った病院に入院して治療してください。