嚢虫症とはどんな感染症か

 条虫のうち、有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)の幼虫が寄生する病気で、幼虫は袋状(嚢状(のうじょう))の形をしていることから嚢虫と呼ばれています。
 有鉤条虫の成虫が産んだ虫卵を飲み込むと、体のなかで嚢虫が形成されます。また、有鉤条虫の成虫が腸に寄生している場合、腸のなかで幼虫が孵化(ふか)・感染して全身に移行し、やはり嚢虫が形成されます。これを自家(じか)感染といいます。虫卵は直径0・1mm以下で、肉眼では見えません。

症状の現れ方

 嚢虫は1cmほどのレモン型をしていて、全身のあらゆる場所に寄生します。そのため、寄生した部位に応じてさまざまな症状が現れます。筋肉や皮下組織に寄生した場合は、しこりが感じられます。
 危険なのは脳に寄生した時で、けいれんや麻痺など、脳腫瘍(のうしゅよう)に似た症状が起こり、放置しておくと死に至ることがあります。

検査と診断

 一般に、症状から嚢虫症と診断するのは非常に困難です。皮下に寄生する場合は、手術で摘出したあとに嚢虫症と判明することがほとんどです。
 神経症状を起こした場合は、ただちに病院で精密検査を受けましょう。脳の嚢虫症は、画像検査で脳腫瘍との区別を行い、同時に嚢虫に対する抗体検査で診断します。

治療の方法

 手術で嚢虫を摘出するほかに、抗寄生虫薬のアルベンダゾール(エスカゾール)、プラジカンテル(ビルトリシド)が有効です。薬剤治療によって嚢虫が死滅すると、その周囲に強い炎症が起こるので、ステロイド薬を併用します。
 脳の嚢虫症では、まず症状を和らげる治療を行い、けいれんがあれば抗けいれん薬を服用します。

嚢虫症に気づいたらどうする

 皮下に寄生した場合にはこぶができるので感染に気づきますが、多くの場合は気づきません。本人が有鉤条虫症の場合や、家族に有鉤条虫症の人がいる場合は、便から排出された虫卵が感染源となって嚢虫症になる危険性があるので、排便後は手をよく洗い、使用したタオルは熱湯消毒します。
 また、有鉤条虫は豚肉から感染するので、生で食べないようにします(条虫症)。