鳥インフルエンザウイルス感染症とはどんな感染症か

 ニワトリ、ウズラ、アヒル、七面鳥などの家禽(かきん)がもっているA型インフルエンザウイルスによる感染症で、ヒトの季節性インフルエンザとは感染症法上で区別されています。鳥インフルエンザウイルスは、鳥に対する病原性の強さから高病原性と低病原性に分類され、ヒトへの感染例が確認されているものは、高病原性はH5N1およびH7N7亜型ウイルス、低病原性はH9N2亜型ウイルスがあります。
 高病原性H5N1ウイルスのヒトへの感染は、主に生鳥マーケットへの立ち入りや病鳥の調理などの濃厚接触により、その体液や排泄物を吸飲したり、生肉を摂食することで起こります。発症後の致死率は60%です。しかし、十分に加熱処理された鶏肉や、鶏卵からの感染はみられていません。現時点でヒトからヒトへの感染は確認されておらず、いずれも散発例のみで、感染事例は中国、東南アジアおよび中東諸国から報告されています。
 一方、H7N7ウイルスはヒトからヒトへの伝播が確認されており、致死率は低いのですが、2003年にオランダの養鶏場で起こった感染者1名の死亡例が知られています。
 なお、「高病原性鳥インフルエンザ」という病名は、2006年の感染症法改正により「鳥インフルエンザ」とされ、亜型で区別することになりました。2008年からはH5N1は2類感染症に追加され、それ以外が4類とされています。

症状の現れ方

 潜伏期は3〜7日と考えられ、感染性のある時期は発症前日から発症後7日間程度と考えられています。症状は通常のインフルエンザとよく似ており、発熱、呼吸器症状、全身倦怠感(けんたいかん)が主症状です。さらに、高病原性鳥インフルエンザでは、急速な呼吸不全や全身症状の悪化、多臓器不全の合併症を起こして死に至ることが、これまでの感染事例から報告されています。また、H7亜型ウイルスでは結膜炎症状を示すことが知られています。

検査と診断

 鳥インフルエンザウイルスはA型インフルエンザウイルスであることから、インフルエンザ迅速診断キットで検出可能です。しかし、検出感度が必ずしも高くないことから見逃しも多く、陰性であっても感染を否定するものではありません。したがって、病鳥との接触歴など疫学的な背景を考慮した臨床診断が優先されます。
 また、迅速診断検査では亜型の特定はできないので、陽性であっても季節性インフルエンザとの区別をするために、H5やH7およびH9亜型ウイルスの特異的遺伝子検出検査や、ウイルス分離による確認を行う必要があります。

治療の方法

 A型インフルエンザに有効な抗インフルエンザ薬のタミフル、リレンザおよび静注剤のラピアクタが有効で、発症した場合は48時間以内の投与が効果的です。また、病鳥に濃厚に接触する可能性の高い場合は、医療用マスク(N95)、ゴーグル、防護服などを着用し感染防御を徹底するとともに、抗インフルエンザ薬の事前服用が推奨されます。
 高病原性H5N1ウイルスの感染予防として、H5N1不活化ワクチンが開発されました。臨床研究により安全性が確認されたことから、2007年には国から製造販売承認が出され、4つの異なる系統のウイルスを用いたH5N1ワクチン3千万人分が製造され、国家備蓄されています。
 なお、備蓄ワクチン量が限られていることから、H5N1が流行した場合は、医療従事者、社会機能維持者の順でワクチン接種する優先順位が決まっています。

鳥インフルエンザウイルス感染症に気づいたらどうする

 ニワトリなどの病鳥との接触歴や、それに関連した職歴、鳥インフルエンザの流行地域への渡航歴の有無によって、患者さんへの初期対応は異なります。
 接触歴があり発熱などの症状が現れていて、迅速診断検査でA型陽性でH5N1が同定された場合は、医療機関は「2類感染症」としてすみやかに最寄りの保健所を通して国へ届けなければなりません。報告を受けた自治体では、検査に必要な検体を確保し、インフルエンザのウイルス学的検査が行われます。
 患者さんは必要に応じて個室で入院管理されます。現時点ではヒトからヒトへの感染は起こっていませんが、医療従事者への感染防御のために使い捨て手袋、マスク、眼鏡、使い捨てガウンなどで、接触感染や飛沫感染の予防策をとる必要があります。
 一方、H5N1以外の鳥インフルエンザの場合は、「4類感染症」として届けられます。外来管理の場合は、ヒトへの感染を防ぐためにマスクの着用、手洗いの励行、人混みに出ない、ほかの人との濃厚な接触を可能な限り避けるなどの措置が必要になります。
 なお、詳細については国立感染症研究所のホームページを参照してください。