薬の副作用、有害作用、および中毒

 薬の最も著明な作用で治療の目的に用いられるものを薬の主作用といい、治療上不必要ないし有害な作用を副作用と呼んでいます。どんな薬でも両方の作用をもっており、副作用は必ずあります。


 副作用の頻度を図3に示しましたが、通常の医療でいかに多くの副作用がみられるかおわかりになると思います。一般に重い病気によく効く薬ほど副作用も多く、実際には、抗がん薬のように主作用の効果と副作用の重さを比較して、薬を使うこともあります。
 薬が市販されるまでには、動物実験およびヒトについて3段階の試験を行い、安全性を守っています。また、医師に薬を提供する時は、その薬について副作用を含めて詳細なデータが添付され、医師は患者さんによく説明することになっています。副作用の発見と予防には患者さんの協力が不可欠です。また、薬は販売後、長期にわたってモニターされ、重要な副作用は厚生労働省が医師に警告を出す仕組みになっています。
 また、最近では、病院や薬局で薬をもらう場合、必ず“あなたの薬の情報”が渡されます。服薬する前に必ず読みましょう。
 薬が健康に悪い影響を与える機序(仕組み)には次のものがあります。
(1)通常の使用量でみられるもの a.体の薬の代謝が生まれつき変わっている場合:薬理遺伝病と呼ばれていますが、極めてまれです。悪性高体温症(あくせいこうたいおんしょう)、無カタラーゼ症など。 b.目的の薬効以外の作用:副作用 c.他の薬などとの相互作用によるもの:同時に多くの薬を飲む時、アルコールなどといっしょに飲む時に問題となります。十分な注意が必要なので、医師には常用薬を知らせておきます。 d.特定の人にみられるもの:薬物過敏症(薬物アレルギー)や特異体質によるものがあります。自分の体質をよく知り、医師に伝えておいてください。
(2)通常以上の量を飲んだ時
 薬物中毒と呼びます。薬は一定量以上飲めば、すべての人に有害作用が現れます。
(3)依存症がみられる場合
 麻薬、鎮痛薬、シンナーなどでは嗜癖(しへき)(とくに好む癖)がみられ、正式には依存症と呼びますが、通常は麻薬中毒やアルコール中毒などと呼んでいます。

薬物過敏症

 薬の副作用のなかで最も多いもので、ある調査では6%の人にみられ、重症例は0・5%とされています。


 有害作用は共通した臓器にみられます。(1)アナフィラキシーショック、(2)血液障害、(3)肝障害、(4)腎障害、(5)肺障害があります。これらの病気とその原因になる主な薬を表7に示します。薬を飲んでいる時は自覚症状に気をつけ、こまめに医師の診察を受けて、早期に薬物過敏症を発見し、予防してください。また、一度過敏症がみられた薬は飲まないようにして、医師にもそのことを伝えます。

薬の催奇形性、胎児異常

 妊婦が薬を服用した時の胎児への影響も副作用のひとつです。極めて多くの薬が胎児に影響するとされています。妊娠の早期診断と医師への伝達および薬の服用には十分に注意しましょう。胎児の器官形成期(妊娠2〜14週)に影響を受けると奇形になることがあります。それ以前では、妊娠しなかったり、胎児が死亡したりします。


 現在、新生児の奇形の原因のうち、薬や化学物質によるものは1%程度とされています。現在までに報告のあった事例には表8のものがあります。

薬物依存症

 薬物依存症も副作用のひとつです。依存症を起こす薬は、麻薬、覚醒剤(かくせいざい)、鎮痛解熱薬、有機溶剤、アルコールなどです。
 依存症には精神的依存症と身体的依存症があります。薬の精神的効果である頭がすっきりする感じ、恍惚(こうこつ)感、酩酊(めいてい)感のとりこになって反復・連用に追い込まれる精神的依存症は必ずみられますが、その薬がないと体が正常に機能しなくなり、薬の中断で退薬(たいやく)症候群(禁断症状)がみられる身体的依存症は、覚醒剤などではみられません。これらは個人の中毒というよりも社会的中毒で、社会としての対応が求められています。

日常生活での薬の有害作用の原因と予防

 薬が日常生活で有毒にはたらく場合には次のようなケースがあります。
(1)誤飲
 用量を間違えたり、小児がアメと思って飲んでしまった場合など。薬の使用書を正確に把握し、また小児の手の届かないところに薬を保管してください。
(2)過飲
 薬を多く飲めば早く治ると思ったり、自殺目的で大量の薬を飲む場合です。正しい知識と自己管理が大切です。
(3)長期服用による蓄積
 とくに脂に溶けやすい薬は、体に蓄積する傾向があります。医師の正しい指導下で服用します。
(4)過敏性
 自分の体質などをよく知り、医師に必ず伝えてください。
(5)飲み合わせ
 常用薬を医師に正しく伝え、また薬の注意書をよく読んでください。