どんな中毒か

 家庭用防虫剤には従来、パラジクロルベンゼン、ナフタリン、樟脳(しょうのう)の3種類の成分が使われていました。最近、シート状の防虫剤が市場に出回っており、これにはピレスロイドが使われています。
 防虫剤市場の70%を占めるパラジクロルベンゼンは、数g(碁石大のもの1個)を飲み込んでも健康に害を及ぼしません。ピレスロイドも毒性が低い物質です。これに反し、ナフタリンや樟脳は2〜3g(成人)で中毒症状を引き起こします。防虫剤中毒では、その成分を確認することが第一です。
 防虫剤による中毒は、乳幼児や認知症の老人の誤食によるものが多くなっています。認知症の患者さんが口にする場合は、薬やアメ玉と思ってなめたり、飲み込んだりというものであり、袋の上からかじる小児の誤食よりずっと大量になります。

症状の現れ方

 ナフタリン中毒の症状は溶血(ようけつ)(赤血球の崩壊)によるもので、大量に摂取すれば腎障害を起こします。急性中毒では吐き気・嘔吐、腹部不快感、発汗、頭痛、振戦(しんせん)(震え)、重症の場合では意識障害がみられます。
 樟脳は中枢神経毒であるため、興奮、呼吸促進、頻脈(ひんみゃく)、けいれんが現れます。重症の場合では錯乱(さくらん)、意識障害から呼吸停止に至ります。
 樟脳中毒の発症は遅くとも2時間以内なので、誤食後2時間以上経過して無症状なら問題はありません。

検査と診断



 包装など品物(成分)を判別するものがなくなっている場合は、水に浮くか沈むかという比重による簡単な識別法が有用です(図6)。

治療の方法

 解毒剤はなく、けいれん対策や呼吸管理などの対症療法が行われます。