高温障害(熱けいれん/熱虚脱/熱射病(日射病))とはどんな病気か



 長時間、高温多湿環境にさらされることによって発生する全身性の温熱障害で、熱中症(ねっちゅうしょう)と呼ばれています。熱中症には、体温の上昇を伴わない熱虚脱・熱けいれんと、体温の上昇を伴う熱射病(日射病)があります。いずれも、基本的病態は同一で、熱による皮膚温の上昇が誘因となります(図8)。

原因は何か

 長時間、高温多湿環境にさらされることが原因です。乳幼児や高齢者、不眠・疲労・脱水・基礎疾患(高血圧糖尿病、心疾患、アルコール中毒、貧血、甲状腺(こうじょうせん)疾患、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)など)がある人では、熱中症が発生しやすくなります。

症状の現れ方


(1)熱虚脱

 最も多くみられる熱中症です。頭重感、頭痛、吐き気、倦怠感(けんたいかん)、脱力感などで発症し、進行すると、脳血流の減少によるめまい耳鳴り、血圧の低下による顔面蒼白や冷汗などが現れます。さらに、意識喪失がみられることもあります。通常、体温の上昇はみられません。
(2)熱けいれん
 塩分を補給せず水分だけを補給した場合に、低ナトリウム血症が増強(水中毒(みずちゅうどく)の状態)されて発症します。口渇、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、身体各部の有痛性の筋れん縮・けいれんなどが現れます。れん縮は手足の筋にみられることが多く、胃に生じることもあります。通常、体温の上昇はみられません。
(3)熱射病(日射病)
 熱の放散が障害され、体内の蓄熱量が増加するため、体温が上昇します。この状態を熱疲労といいます。放置すれば、体温はさらに上昇し、ついには体温調節中枢の破綻(はたん)を来して熱射病に移行します。
 熱射病では、体温調節中枢が破綻しているため、体温が41℃以上にもなります。初期には、著明な発汗や口渇、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、倦怠感などが認められます。進行すると、皮膚は乾燥し熱く紅潮して、けいれんや意識障害、乏尿・無尿などがみられます。

検査

 検査が必要になるのは、熱中症のなかでも熱射病(日射病)です。熱射病では、病態の把握と重症度の判定のために次のような検査が必要になります。
 胸部X線検査(肺水腫(はいすいしゅ)の検索)、頭部CT検査(脳浮腫(のうふしゅ)の検索)、血清AST、ALT、LDHの測定(肝障害時には上昇)、血清尿素窒素(ちっそ)・クレアチニン濃度の測定(腎障害時には上昇)、血清CPKの測定(筋融解時(きんゆうかいじ)には上昇)、血小板数・プロトロンビン値・活性化部分トロンボプラスチン時間・FDPの測定(播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群の検索)、動脈血ガス分析(アシドーシスの検索)、血清ナトリウム・カリウム・クロール濃度の測定(電解質異常と程度の検索)、白血球数・ヘモグロビン濃度の測定(脱水の存在で上昇)です。

診断

 長時間、高温多湿環境にさらされた病歴が重要です。各病型は、臨床症状の現れ方が診断の決め手になります。多くの場合、いくつかの病型が混在して発症します。意識障害を来す疾患やけいれんを起こす疾患、発熱を伴う疾患との区別が必要になります。

治療の方法

 熱中症では衣服を脱がせ、涼しい環境に移して治療を開始することが基本です。軽症の熱虚脱や熱けいれんでは、スポーツドリンクや食塩水(水500mlに対して茶さじ1杯約5gの食塩)を飲用します。重症例では、生理食塩水や乳酸リンゲル液などの輸液療法が必要です。予後は良好です。
 熱射病(日射病)は入院治療が原則です。迅速に体温を降下させ、循環動態を観察しながら輸液療法を行うことが必要です。また、ショックや播種性血管内凝固症候群、多臓器不全などの合併症に対する治療も必要です。
 意識障害、とくに昏睡が4時間以上続いて回復しない場合や播種性血管内凝固症候群、多臓器不全を合併した場合、予後は不良です。

高温障害(熱けいれん/熱虚脱/熱射病(日射病))に気づいたらどうする

 軽症の熱虚脱や熱けいれんでは、涼しい所で安静をとり、スポーツドリンクや食塩水を飲用してください。重症例や熱射病(日射病)では、内科を受診して、治療を受けてください。
 日常生活では、長時間の高温多湿環境にさらされないように注意し、水分や塩分の補給を忘れないようにしましょう。