慢性砒素中毒<中毒と環境因子による病気>の症状の現れ方

 経気道曝露が長期に及ぶと、慢性気管支炎が起こり、また急性中毒にみられる皮膚炎とは違った部位に皮膚症状が現れます。すなわち、足の裏、手のひらを中心に角化症が認められるようになり、顔面、四肢、体幹部のとくに衣類などでの摩擦部位を中心に角化、色素異常(黒皮症と白斑)が認められ、このあとの経過で角化いぼ、ボーエン病皮膚がんになります。
 呼吸器症状および皮膚症状が現れる前後から疲労、倦怠感(けんたいかん)、めまいなどの全身症状を訴え、高度のものでは神経痛に似た疼痛やしびれ感など、末梢神経炎の症状も加わってきます。また砒素化合物、とくに三酸化砒素の高濃度曝露では、鼻中隔穿孔を起こします。金属精錬作業者には肺がんの増加が認められています。
 経口的曝露による慢性砒素中毒症では、台湾における井戸水の常用により起こった烏脚病(うきゃくびょう)(下肢の壊疽(えそ)および皮膚がん)が慢性砒素中毒ともされています。
 この場合、経気道曝露と違い、疲労、倦怠感、めまい、体重の減少などの全身症状が最初にみられ、同時に皮膚の角化症、顔面、四肢、体幹部の色素異常が認められます。
 日本では土呂久鉱害や笹ヶ谷鉱害の慢性中毒者中にボーエン病が認められ、角化、色素異常、いぼや膀胱がんがあり、また多発性であることが特徴です。

慢性砒素中毒<中毒と環境因子による病気>の診断と治療の方法

 治療薬として、キレート剤であるジメルカプロール(バル)が使われてきました。予後は、全身性の黒皮症は曝露から離れると徐々に軽快します。しかし色素沈着や白斑は持続的であり、角化症も改善しにくい傾向にあります。末梢神経炎は軽度であれば治ります。