多発性筋炎、皮膚筋炎とはどんな病気か

 多発性筋炎(PM)は、筋肉の障害(炎症や変性)により、筋肉に力が入らなくなったり、筋肉の痛みを感じたりする病気です。また、特徴的な皮疹(ゴットロン徴候やヘリオトロープ疹など)がみられる場合には、皮膚筋炎(DM)と呼ばれます。
 多発性筋炎は膠原病(こうげんびょう)のひとつで、筋肉(骨格筋)だけでなく、肺、関節、心臓、消化管など、他の臓器障害を合併することもあります。好発年齢は小児期(5〜14歳)と成人期(35〜64歳)の2つのピークを示し、成人では1対2で女性に多く、日本の有病率は10万人に2〜5人、年間受療患者数はPMで3964人、DMで3118人(1993)と推定されています。

原因は何か

 免疫の異常(自己免疫異常=病原体などから自分の体を守る「免疫」のバランスが崩れ、健康人では認められない、自分の体の成分に対する抗体を作ってしまう異常)、ウイルスなどの感染、悪性腫瘍、薬剤の影響、遺伝的素因などとの関連が考えられていますが、その原因はまだわかっていません。

症状の現れ方



 筋肉の障害による筋力低下が大多数の患者さんにみられます。さらに、筋肉以外の症状(皮膚や内臓などの障害)が認められることもあります(図1)。
(1)筋肉の症状
 筋肉が障害され、疲れやすくなったり、力が入らなくなったり(筋力低下)します。しかし、ゆっくりと発症し、はじめは自覚症状に気づかない場合もあります。一般に、躯幹に近い部分の筋肉(頸部屈筋(けいぶくっきん)、咽・喉頭筋、肩帯筋、腰帯筋)が対称的に障害されます。また、筋肉の痛みを認めることもあります。
(2)筋肉以外の症状 ・発疹眼瞼(がんけん)部のはれぼったい紫紅色の皮疹…ヘリオトロープ疹、手指関節背面の皮がはげた紅色の皮疹…ゴットロン徴候、肘(ひじ)や膝(ひざ)などの関節背面の少し隆起した紅色の皮疹など ・関節痛・関節炎関節リウマチのような破壊・変形はまれです。 ・レイノー現象寒冷時に手指が白くなり、じんじんしびれたりする症状 ・呼吸器症状肺胞(はいほう)と肺胞の間や血管のまわりにある間質(かんしつ)に炎症(間質性肺炎)が起こり、空咳(からぜき)、息切れ、呼吸困難が起こります。 ・心症状不整脈、心不全など ・悪性腫瘍の合併とくに高齢者のDMで注意が必要です。 ・全身症状発熱、全身倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、体重減少などを認めることがあります。

検査と診断

 診断は、(1)筋力低下、(2)特徴的な皮膚症状、(3)血清筋原性酵素の増加(クレアチンキナーゼ(CK)、アルドラーゼ、LDH、AST(GOT)など、筋肉内に含まれる酵素が筋肉の破壊により血液中に放出され増加)、(4)特徴的な自己抗体(抗Jo‐1抗体がPMDMの30%で陽性)の検出、(5)筋電図(筋肉の機能を電気的に調べる検査)の特徴的変化、(6)筋生検(筋肉の一部を採取し、顕微鏡で調べる検査)の特徴的組織所見(炎症性細胞の浸潤(しんじゅん)、筋線維の大小不同、壊死(えし)・再生像)などの結果を組み合わせて行われます。
 全身の倦怠感が認められ、血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)、LDHなどが上昇するため、肝炎、肝機能障害と誤って診断されている場合もありますが、筋障害を反映する血清CK値の測定により区別されます。

治療の方法


(1)一般的治療

 発症直後(急性期)は、できるだけ安静にして筋肉に負担をかけないようにします。筋力の回復、関節の拘縮(こうしゅく)予防のためにリハビリテーションは大切ですが、いつから開始し、どの程度行うかは、患者さん一人ひとりの病状で異なります。
 一般に、筋原性酵素(血清CK値)が薬物療法により正常値に低下し、順調な筋力の改善を確認してから、徐々に開始します。食事は高蛋白、高カロリー食で消化のよいものをとるようにします。
(2)薬物療法
 本症の基本治療は薬物療法です。副腎皮質ステロイド薬(ステロイド)が主に使われ、多くの患者さん(70〜80%)で効果がみられます。
 大量ステロイド療法(体重1kgあたりプレドニゾロン換算で1mg日)が2〜4週間行われ、筋力の回復や検査所見の改善をみながらゆっくりと(数カ月かけて)、最少必要量(維持量)まで減量されます。急速な減量は再発を来すことがあり、望ましくありません。筋力の回復は、発病後の治療開始が早い場合ほどよいとされています。
 しかし、ステロイドが無効であったり、その副作用が出てしまう場合には、免疫抑制薬が投与されることもあります。また、これらの治療でも効果が得られない時は、γ(ガンマ)グロブリンの静脈内注射療法が有効という患者さんが最近報告されています。ただし、保険適用外です。また、長期の有効性や副作用は不明で、今後の検討が必要です。悪性腫瘍を併発した場合は、腫瘍摘出などの悪性腫瘍の治療により筋炎、皮膚症状が改善することも知られています。
(3)生命予後
 悪性腫瘍、感染症、心肺合併症(物ののみ込み(嚥下(えんげ))運動の障害による誤嚥性(ごえんせい)肺炎、呼吸筋障害による呼吸不全、心筋障害による心不全など)により左右されます。悪性腫瘍の合併のない場合は、5年生存率90%、10年生存率80%と生命予後は比較的良好です。しかし、その経過は個々の患者さんで異なります。
 現在の最大の問題は、急激に進行し、呼吸困難を来す「急速進行性間質性(かんしつせい)肺炎」です。生命に関わる合併症ですが、その原因は不明で、治療法も確立されていません。

多発性筋炎、皮膚筋炎に気づいたらどうする


(1)受診する診療科は

 PMDMは筋肉ばかりでなく、他の臓器も障害されることがあり、どの診療科が最適と簡単には決められません。一般に、膠原病・自己免疫疾患のひとつとしてリウマチ(膠原病・免疫)内科、筋肉の病気として神経内科、皮膚症状(発疹)を中心に皮膚科を受診される患者さんが大多数です。障害された臓器を中心に全身を総合的に診療できる専門医に診てもらうことが大切です。
(2)生活での注意
 病気を悪化させるきっかけは心身のストレス(DMでの紫外線曝露(ばくろ)など)といわれています。規則正しい生活、十分な安静・休養をとるよう心がけてください。とくに、間質性肺炎などを合併している患者さんは、かぜなどの感染症が病気を増悪させてしまうことがあります。手洗い、うがいを励行してください。