●胎芽病(たいがびょう)
 いろいろな臓器の基になる胎芽は発生の初期に1個の細胞から分化します。胎芽ができ上がるまでの期間は外からの影響を受けやすいことがわかっています。
 たとえば、妊娠3カ月までに風疹(ふうしん)にかかると、胎児に白内障(はくないしょう)、先天性心疾患難聴(なんちょう)を伴った障害が出ることがあります(風疹症候群)。ところが妊娠5カ月ころに風疹にかかると眼の症状は出ません。また、妊娠7〜8カ月に感染すると難聴の症状しか出ません。
 眼の胎芽は3カ月ころ、心臓の胎芽は5カ月ころ、聴覚器官の胎芽は9カ月ころに完成し、胎芽が完成すると風疹ウイルスの影響を受けにくくなるのが原因です。

影響を与える環境とは

 胎芽の形成に影響を与える環境としては、放射線、化学物質、ウイルスが代表的です。放射線が原因の胎芽病としては小頭症(しょうとうしょう)がよく知られていますが、比較的低線量の被曝でも発達遅滞の原因になるという警告があるので、妊娠中の被曝には十分注意することが大切です。
 胎芽病の原因になる化学物質としてはサリドマイドがよく知られています。ミノアレビアチンなどてんかん治療薬のなかにも胎芽病を起こすものがあります。インターネットなどで催奇形薬(さいきけいやく)の情報が得られますが、妊娠中の服薬については産婦人科の主治医とよく相談することが大切です。
 胎芽病の原因になるウイルスとしては風疹やサイトメガロウイルスがよく知られています。ウイルス感染は抗体検査で確認できますが、障害の発生とウイルス感染の因果関係がはっきりしない場合もめずらしくありません。

心配しすぎないこと

 遺伝子異常や染色体異常も結果的には胎芽形成の異常により症状を現すので、胎芽病と臨床的に区別することが困難な場合があります。
 妊娠初期に放射線、薬の服用、ウイルス感染に注意することは大切ですが、あまり心配しすぎるとかえって胎児に悪い影響を与えるかもしれません。一人で悩まず、産婦人科医や臨床遺伝専門医とよく相談してください。

●胎児病(たいじびょう)
 胎芽が完成しても環境要因により先天異常が発生することもあります。水銀中毒による胎児性水俣病(みなまたびょう)や、最近ではみられなくなった母親の梅毒(ばいどく)感染が原因となる先天梅毒がよく知られています。
 また妊婦の喫煙は、胎児や胎盤を低酸素状態にさらすことにより未熟児の原因になることがあります。妊婦が糖尿病のために高血糖になっていると、巨体児の出生や新生児期低血糖症の原因になることがあります。
 妊婦の細菌感染によって、胎児性中耳炎が原因の難聴が赤ちゃんに発生することもあります。
 これらの催奇形因子は胎芽の形成に直接作用したものではないため胎児病と呼ばれますが、催奇形因子が妊娠のいつの時期に作用したかはわからないことも少なくなく、厳密に胎芽病と区別することは難しい場合があります。