ミトコンドリア異常症とはどんな病気か

 ミトコンドリアは細胞のなかで主にエネルギーを産み出し、細胞活動を支えています。一つひとつの細胞が正常にはたらかないと、細胞からできている組織や臓器の機能が損なわれて病気になります。
 たとえば、筋肉であれば収縮運動、心臓であれば血液を送るポンプ機能が低下し、脳であれば神経が麻痺したりけいれんが起きたりと、さまざまな症状が現れます。ミトコンドリアの異常では、細胞のエネルギーがうまくつくられずに、このようないろいろな臓器の症状が現れます。

原因は何か

 細胞のなかの核にDNA(デオキシリボ核酸)があり、そのDNAが遺伝子という意味のある情報を担っているのですが、実はミトコンドリアのなかにも核DNAとは別のDNAが存在しています。多くの病気が核DNA上の遺伝子の変化で起きますが、ミトコンドリア異常症は、核DNAとともにミトコンドリアDNAの変化でも起きます。
 ミトコンドリアは不思議です。母の卵子と父の精子が受精して、命の始まりである受精卵ができる時、その受精卵のなかのミトコンドリアはすべて母の卵子由来なのです。ミトコンドリアDNAに変異があっても、母からは子には伝わりますが、父からは伝わらないことになります。これを母系(ぼけい)遺伝といいます。
 ただし、ミトコンドリア異常症がすべて母系遺伝なのではありません。ミトコンドリアDNAは変化が起きやすいので突然変異で起きる場合もありますし、核DNAにある遺伝子の変化でも起きますから、優性(ゆうせい)遺伝や劣性(れっせい)遺伝のこともあります。

症状の現れ方



 ミトコンドリア異常症の症状はさまざまです。臓器ごとの主な症状を図17に示します。症状の現れる年齢、重症度も人によりまちまちなのが特徴です。そのなかで比較的共通の症状(多くは中枢神経の症状)をもつものをまとめて、個別の病名をつけています。
 たとえば、20歳以前の若い人に起こる脳卒中(のうそっちゅう)に似た症状を特徴とするMELAS(メラス)や、眼球の動きが麻痺してしまう慢性進行性外眼筋麻痺(がいがんきんまひ)症候群などがあります。

検査と診断

 ミトコンドリア異常症の検査は、2つに分かれます。まず、どのような臓器の症状があるかを調べる検査が必要です。けいれんがあったり脳卒中症状があったりすると脳波検査や脳画像検査などが必要になりますし、耳の聞こえが悪い、疲れやすいなどの症状があると、耳の検査や心臓・腎臓・肝臓などの検査が必要になります。
 さらに、それらの症状が本当にミトコンドリアの異常で起きているのかどうかを調べるために、血液と骨格筋の検査が必要です。最も信頼がおける検査は骨格筋生検で、病理検査(形を調べる)、生化学検査(はたらきを調べる)、遺伝子検査(DNAを調べる)を行って、総合的に判定します。

治療の方法

 現在のところ、ミトコンドリアの機能を高める薬物(ビタミン剤など)と症状に応じた薬物治療(けいれんがあれば抗けいれん薬、糖尿病があればインスリンなど)を行っています。

ミトコンドリア異常症に気づいたらどうする

 いろいろな臓器の症状が組み合わさって現れることが多いので、ひとつの診療科ではなかなか診断がつかないことがあります。治療でも、いくつもの診療科の専門医に診てもらう必要があります。できるだけ多くの科のある総合病院で診断・治療してもらうとよいでしょう。