自己免疫性膵炎とはどんな病気か

 自己免疫の機序(仕組み)異常により膵臓(すいぞう)が障害を受ける、すなわち体内に自身の膵臓を攻撃する因子が出現することにより、膵臓に慢性的な炎症を来す疾患です。まれな疾患であるため、以前は膵がんと区別がつかず手術されることもしばしばありました。臨床病態が明らかになってきたのはまだ最近のことです。
 高齢者に多く、発症年齢では60代にピークがみられます。男女比は5対1で男性に多い疾患です。また、膵臓以外の部位(胆管(たんかん)、唾液腺、後腹膜(こうふくまく)、肺、腎臓など)にもさまざまな炎症性病変を来すことが知られています。

症状の現れ方

 膵臓が炎症により腫大するため、膵内を走行する胆管が押しつぶされて胆汁(たんじゅう)が腸に流れなくなります。このために黄疸(おうだん)を初発症状とする例が約6割と最も多くなっています。腹痛はたいていの場合軽く、腹痛を伴わないこともあります。糖尿病の悪化や発症を契機として診断される場合もあります。また、3割程度に体重減少がみられます。

検査と診断



 超音波検査やCTで膵臓の全体的あるいは部分的な腫大が認められた場合にこの病気を疑うことになります(図26)。膵腫大と並ぶもうひとつの大きな画像的特徴は膵内を走行する膵管(すいかん)の狭細(きょうさい)変化ですが、膵管の狭細変化の確認のためにはまず非侵襲(しんしゅう)的に膵管を描出できる磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)を行い、最終的には内視鏡的膵胆管造影(ERCP)により評価します。


 画像検査と並んで重要なのが血液検査です。診断基準(表18)にあるように、γ(ガンマ)グロブリン高値(2gdl以上)、免疫グロブリンG (IgG)高値(1800mgdl以上)、IgG4高値(135mgdl以上)、自己抗体陽性のいずれかが認められる必要があります。
 このなかで自己免疫性膵炎に最も特徴的なのはIgG4の高値で、9割近い症例で陽性となります。免疫グロブリンG(IgG)にはIgG1〜IgG4の4つの分画のあることが知られ、IgG4は寄生虫疾患やアレルギー疾患で上昇することが報告されていますが、消化器領域では自己免疫性膵炎以外の疾患での上昇はまれです。
 画像検査、血液検査のみでは確定診断に至らない場合は膵の生検(組織採取)が考慮されます。リンパ球や形質細胞の明らかな浸潤が特徴的とされます。
 各種検査を行い、診断基準を満たすものは自己免疫性膵炎と診断されますが、実際には診断基準を厳密には満たさない症例も存在し、ステロイド薬による診断的治療によって診断される場合もあります。

治療の方法

 自己免疫性膵炎はステロイドという免疫を抑える薬剤が大変有効で、ステロイド薬のひとつであるプレドニゾロンという薬剤を30〜40mg日で1カ月投与すると、膵の腫大や膵管の狭細は明らかに改善します。以後は徐々に減量し最終的に5mg程度で維持することが多いようです。
 ステロイドを短期で中止にしてしまうと再燃の多いことが知られており、少量のステロイド投与(維持療法)をある程度続ける必要がありますが、どの程度の期間続ければよいかはまだコンセンサスが得られていないのが現状です。