単純ヘルペスウイルス脳炎(成人)とはどんな感染症か



 単純ヘルペスウイルス脳炎の成人例は、三叉神経節などに潜伏していた単純ヘルペスウイルスが活性化し、神経を上向して脳にいき、脳炎を起こします(図1)。世界中で起こり地域性はありません。
 日本では年間約350人が発症しますが、散発性に起きる脳炎のなかで最も頻度が高く、かつ急速に重症化することが多いものです。つまり、早く適切な治療を受けないと死亡したり高度後遺症を残す病気で、緊急対応が必要です。
 抗ヘルペスウイルス薬であるアシクロビルの開発により、6〜7割の患者さんが亡くなられた以前の状況から、約2割の死亡率に減少しています。しかし、現在でも約3〜5割の患者さんは死亡あるいは高度後遺症を残し、社会生活に復帰できる方は約半数です。脳はほかの臓器と異なり極めて再生能力が乏しい臓器ですから、時間単位の早期の診断と治療が大変重要となる病気です。したがって、できるだけ早く専門的な医師を受診することが必要です。

症状の現れ方

 多くは、比較的急速に発熱・頭痛・けいれん・精神症状(わけのわからないことを言ったり、行動したりする)などの症状を示し、その後に意識障害に陥ります。重症だと数時間で昏睡になります。これらの症状が最初からすべて現れるとは限らず、最初は熱がなく精神症状のみで発症し、その後に発熱や意識が悪化する場合があります。したがって、突然の精神症状が現れた場合、このような病気もまれながらあるとの認識が大切です。

検査と診断

 診断は、発熱・意識障害など脳炎を示す症状に、髄液検査でリンパ球優位の細胞増加、蛋白濃度の増加を認め、さらに、脳のMRI検査で側頭葉の底部内側を中心に異常を認めたり、脳波検査で周期性一側性てんかん型放電をみるなど、比較的特徴的に出現する所見を認めれば、この病気を疑いすぐに治療を開始します。
 確定診断は、髄液を用いたPCR法という高感度にウイルスのDNAを検出する検査法で陽性であることや髄液中のウイルスの抗体価の測定結果により行われます。

治療の方法



 診療ガイドラインでは、病気を疑った段階(原因が確定する前)で、できるだけ早くアシクロビルの治療を始めることがすすめられています(図2)。最近の研究では、この病気の治療にアシクロビルと副腎皮質ステロイド薬の併用療法が予後の点からよいとする報告があります。

単純ヘルペスウイルス脳炎(成人)に気づいたらどうする

 この病気は早期に適切な治療を迅速に開始することが重要ですから、ただちに神経内科を受診すべきです。予防法はありません。