女性の病気とは

 女性は子を宿すというとても大切な役割を担っています。そのため、生殖器系が形態的にも機能的にも男性と大きく異なっています。女性の生殖器は月経周期や妊娠・出産に伴いダイナミックに変化するものであり、そのため男性に比べ生殖器の異常も多くみられます。このことが女性特有の病気の頻度や種類が、男性特有の病気より多いということにつながります。女性特有の病気は大きく3つに分けられます。

 ひとつは妊娠・出産するという女性特有の機能が障害されるもので、いわゆる不妊症がこれに相当します。

 2番めは、個々の生殖器に異常を来し、それによる不快な症状や生命の危険が発生するものです。この場合にも、生殖能力が低下または喪失することもあります。

 3番めに主として卵巣機能の低下による女性ホルモンの欠乏の影響が全身に及び、それによる異常がみられることがあります。他方、生殖器系以外の異常が生殖器系の障害をもたらす場合もあります。

 このように、生殖器系の異常は個体の維持やQOL(生活の質または人生の質)のみならず、次世代の出生にも大きく影響するという特徴をもっています。

女性の病気の種類とその動向

 女性の病気は、妊娠に関連するものとしないものとに大別されます。妊娠に関連しない病気で頻度の高いものに月経の異常があります。多くは内分泌疾患ですが、時にホルモンの異常はなくても月経を直接起こす器官である子宮の異常が原因となることもあります。ホルモンの異常としては卵巣自体の疾患もありますが、これはまれであり、多くの場合は卵巣機能をコントロールする脳下垂体や、さらにその上位の視床下部の異常によることが多いのです。

 女性生殖器自体の病気の主なものは子宮や卵巣の疾患であり、良性のものと悪性のものとがあります。女性の疾患は妊娠や出産と深く関係しており、近年女性が子どもをあまり産まなくなったことにより、子宮筋腫や子宮内膜症などの良性疾患、子宮体がん、卵巣がんなどの悪性疾患が増えています。

 子宮頸がんはパピローマウイルスの感染によるとされており、初交年齢の低下や性的に活発な女性の増加などにより、発病の低年齢化の傾向がみられます。

 性の自由化により性感染症も増加傾向にあります。とくに若年女性でのクラミジア感染が急増しています。これは、無症状のことも多いのですが、卵管の通過性が障害され、不妊症の原因としても注目されています。幸いに妊娠したとしても、新生児に結膜炎や肺炎などを起こすことがあります。

 このように、性の解放によるクラミジア感染の広がりは、少子化にも拍車をかけていると考えられ、社会的にも大きな問題となっています。

 不妊症で治療を受けている女性は著しく増えています。その理由として、前述のクラミジアに代表される性感染症の増加があります。また、生殖能力は30代後半より徐々に下降し、40代前半で妊娠の可能性は極めて低率となりますが、40歳近くになって子どもをつくりたいという女性が増えているという事実があります。さらに社会全体として仕事がきびしくなる傾向があり、それによるストレスは、生殖能力を低下させることになるといったことがあげられます。

 妊娠に関連するものとして流産、子宮外妊娠、早産、胎児の発育障害、前置胎盤、妊娠高血圧症候群など、妊娠の時期に応じてさまざまな異常がみられます。産科の管理が進歩し、子宮外妊娠、前置胎盤などが早期に診断されるようになり、母体が重症になることは極めてまれになっています。

 しかし反面、高齢出産が増えるにつれてさまざまな産科異常が増えています。また不妊治療を求める女性の高齢化に伴い、子宮筋腫などの婦人科疾患をもった妊娠例や、糖尿病や高血圧などの生活習慣病合併例が相対的に増えています。

女性の病気に関係する症状

 月経に関するものが最も多くみられます。すなわち月経が完全になくなる、不規則になる、量が増える、長引く、月経痛が強いといったものです。これらは月経の異常として一括して扱われることもありますが、おのおの異なった背景があり原因も大きく異なります。

 とくに月経が遅れるとか長引くといったもののなかには妊娠に関係するものがあり、この場合は急に生命の危険が及ぶこともあるので、すみやかに専門医に相談しなくてはなりません。また多量の出血がある場合、それ自体が貧血やショックを起こすので急を要します。

 おりもの(帯下)の異常もよくみられる症状です。かゆみを伴うことも多く、最も多いのは腟炎です。しかし時に子宮や卵管の悪性病変がひそんでいることもあります。とくに閉経後、いったん、おりものがまったくなくなってからおりものに気づいた場合は格別な注意が必要です。

 異常な出血は大変気になりますが、閉経前か閉経後かでその原因はまったく異なります。閉経前の女性では、月経が長引くといった月経と関連した出血か、月経と無関係に起こっているかを区別することが肝心です。後者には子宮がんなどによる出血も含まれます。

 閉経後の出血は、閉経後1〜2年以内であれば特別な異常がなくてもたまにみられます。しかし、閉経後5〜10年もたって出血をみる場合は、何か特別な原因があると考えたほうがよいでしょう。ただし、わずかに下着につくだけのようなものは、女性ホルモンの欠乏による腟炎が原因となっていることもあります。

 下腹部の痛みは女性の病気でよくみられます。月経と関連するのか、突然発症したのか、激痛なのか、ほかに症状を伴うのかといった情報が重要です。

 原因としては、子宮内膜症、骨盤内の炎症、子宮筋腫、卵巣腫瘍が茎の部分でねじれた場合(茎捻転)、卵巣出血、子宮外妊娠などさまざまなものがあげられます。

 今まで経験したことがない下腹部痛の場合は、ただちに受診しましょう。血尿、排尿痛を伴う場合は膀胱炎や尿路結石などの泌尿器系の病気が考えられます。また、下痢、血便、便秘などの消化器症状があれば、婦人科の病気の可能性は低いといえます。

女性の病気の最近のトピックス

 月経痛を訴えて子宮内膜症と診断される女性が増えてきています。これは未婚女性の増加、結婚年齢の上昇など女性の社会進出に並行してみられるもので、先進国に共通してみられます。

 痛みを何とかがまんすればそれですむ場合と、将来の不妊の原因となったり、悪性腫瘍(とくに卵巣がん)への移行などが懸念される場合もあります。腹腔鏡手術の普及により治療成績は向上しましたが、完治が困難または再発などの問題があり、極めて今日的な女性の病気となっています。

 高齢社会を迎え、高齢女性のヘルスケアも大きな課題となっています。中高年女性の健康障害は、男性と異なり女性ホルモンの低下が誘因になっているものが多く、女性ホルモンを補充することによる健康状態の維持改善と、それのマイナス面とを個別にきめ細かく評価して対応していくことになります。

(執筆者:武谷雄二