男性生殖器の病気

 男性生殖器は、男性にとって大変重要な臓器です。しかし、性が関係するため「恥ずかしい」「男性は黙って耐える」などといったことから、病気への無理解や発見が遅れることがありました。

 しかし時代は変わり、現在では老若男女を問わず男性生殖器の重要性を認識し、その病気に正しい知識で適切に対応することが常識になっています。

 たとえば、男性は年をとると夜トイレに起きる回数が増え、排尿に時間がかかるようになるものだと思われてきました。しかし、実はこれは前立腺肥大症などの前立腺の病気であり、適切に治療すれば若い時と変わらない状態にまで回復することが社会的にも認知されるようになってきました。また女性に特有の病態とされる「更年期」は、男性にも似たような状態があり、「男性更年期」という病態として位置づけられてきました。

 社会が成熟し、正しい情報が伝わりやすくなった現在、男性生殖器の仕組みやはたらきとその病気を正しく理解し、万が一の時に適切に対応していただくことに主眼をおいたのがこの章です。

男性生殖器の仕組みとはたらき

 男性生殖器の仕組みとはたらきは、子孫を残すための男性側の仕組みといえますが、理解のためのキーポイントは、

(1)男性生殖器は、精子を作り成熟させ、またその通り路であり、体外へ出す仕組みである。

(2)男性生殖器は、尿路系(腎臓で尿が作られ体外へ出す仕組み)へとつながる。したがって、病気の症状や広がりも腎・尿路系とオーバーラップ(重なり合う)することが多い。

(3)男性生殖器の仕組みとはたらきは、男性ホルモンに左右される。

の3つです。ちなみに女性の生殖器は、卵子を作り女性ホルモンに左右されます。尿路系とは直接はつながっていませんが、ごく近い関係にあります。通常、男の赤ちゃんは成人男性と同じ仕組みと外見をもって生まれてきますが、生殖器としてのはたらきはもっていません。男性ホルモンの値が体内で高くなってくる思春期以降にそのはたらきをもつようになり、通常は老年期を迎えてもはたらきはもち続けます。

 図1は男性生殖器を示しています。まず精子は精巣で作られ、ある程度成熟します。精巣はかつて睾丸といわれていましたが、近年では女性の卵巣(卵子が作られる)に対して、精巣と呼ばれるようになりました。精巣は、左右の陰嚢のなかに1個ずつあり、白い厚い膜に包まれ、縮れた糸状のものがぎっしり詰まっています。顕微鏡で見ると、この糸状のなかはひとつの管になっていて、この管の内腔で生殖細胞から精子が作られています。

 作られた精子はさらにこの管のなかを通って、精路とも呼ばれる精子の通り路に出ます。精巣を出た精子はまず細い網目状の管を伝って精巣上体(副睾丸)に入ります。精巣上体は、精巣の側面についている束状のところですが、このなかも細い管でできており、精子はこのなかを通ってさらに成熟すると考えられています。成熟した精子は精巣上体の尾部に貯えられます。

 精巣上体は精管へとつながります。精管は1本のパイプ状の長いしっかりした管で、精巣から陰嚢の付け根あたりを上行し、下腹部にある腹壁の重なりである鼠径管を抜け後腹膜腔に至り、膀胱の裏側にある精嚢につながります。一方で、先が細くなった射精管となり、前立腺のなかを貫いて尿道に向けて開口します。

 精子はこの路をたどって運ばれ、その間にも通り路や精嚢から栄養などを受けて成熟し、活動性を増していきます。これらの液は精液の一部になります。

 射精管が通っている前立腺は、膀胱の直下に存在し、精子の通り路である射精管と膀胱からの尿の通り路である尿道が前立腺を貫いており、ここに前立腺液を出します。精子が体外に出る、いわゆる射精時には、精液は精子と精嚢腺の分泌液とこの前立腺液の混じったものになります。前立腺液には精子へ栄養を与えたり、精子を保護する役目があるといわれています。射精管は尿道に向けて開口していますから、精液は尿道を通り陰茎の先端から出ることになります。

 この精子が作られ、体外に出るまでの全経路を男性生殖器と呼びますが、男性の場合、精子の通り路と尿の通り路は一部重なっていることになります。

 一方、精子が作られる精巣は男性の生殖機能や体のはたらきを調節する男性ホルモンを出す場所でもあります。精巣で作られる男性ホルモンは、精子のような特別の通り路を通らず、近くで血管内に入り、体の他の部分に作用して男性の体の特徴を出すのにはたらきます。

 精巣での男性ホルモンの作用は、脳の近くにある下垂体から出る性腺刺激ホルモンや、さらにその上部にある脳の視床下部から出るホルモンと、脳のはたらきそのものにより調節を受けています。

男性生殖器の主な病気

 男性生殖器の病気は、泌尿器科で扱います。病気の部位によって特有な症状が現れます。また成人から老年期に多い病気、青少年期に多い病気、幼・小児期に多い病気とそれぞれ特徴があります。

 成人から老年期に多い病気は、前立腺の病気です。ほとんどが前立腺肥大症で、尿の出が悪い、夜間頻尿などの症状が出ます。前立腺肥大症そのものは良性の疾患ですが、注意すべきなのは前立腺がんが混ざることがあることです。前立腺がんは、早期発見・治療が第一なので、前立腺肥大症の人は必ず前立腺がんの検査を受けられるとよいと思います。

 青年期で注意すべきなのは、精巣のがんです。精巣のがんは幼年期と青年期に頻発します。精巣のがんは極めてたちが悪いのですが、現在では治療法が進歩し、手遅れでなく適切に治療すればほとんどは完治します。この病気では精巣がはれてきたり、精巣にシコリができますが、痛くないことが特徴です。時々、本人が、あるいは幼・小児の場合は親が触ってみるとよいでしょう。精巣にシコリやはれがありおかしいと思ったら、迷わず、恥ずかしがらずに泌尿器科の専門医の診察を受けてください。似たような病気に陰嚢水腫、精巣上体炎やおたふくかぜなどによる精巣の膨大があります。

 幼・小児期には、停留精巣という精巣が陰嚢内に下降しきっていない病気や、外性器のさまざまな先天異常、身近なところでは包茎などがあります。これらも適切な診断・治療が行われれば、ほとんどその後の生活と成長に支障はないので、泌尿器科専門医に相談してみてください。

 また、不妊症で男性側に原因のある場合(不妊症の約半分)があります。これについては男性だけ治療すればよいものや、女性側のパートナーと一緒に治療の必要なものなどさまざまですが、泌尿器科で不妊症の専門家に相談し、産婦人科の不妊症治療の専門医と密接に連携を取りながら治療を受けるとよいでしょう。

 そのほかにも、男性更年期障害などいろいろな病気がありますが、適切な治療で大事に至らないものがほとんどですので、恥ずかしがらずに、また自分だけで悩み迷わずに、しっかりした泌尿器科の専門医に相談してみてください。

(執筆者:窪田吉信