血液・造血器の病気の種類と現況

 血液の病気では、貧血、白血球数の異常(増加・減少)、出血傾向などがみられますが、その原因はさまざまです。何か異常に気づいた場合は専門医の診察を受けることが大切です。

貧血

 体を動かした時の動悸や息切れ、易疲労感(疲れやすい)、全身倦怠感などの症状が現れます。ただし、貧血がゆっくり進行してきた場合には、代償機序(補おうとするメカニズム)がはたらくため、症状が出にくくなります。

 なお、立ちくらみによる「めまい」は、低血圧の人が立ち上がった時にさらに血圧が下がって起こるもの(起立性低血圧、いわゆる脳貧血)で、一般に、貧血によるものではありません。

 最もありふれた貧血は鉄欠乏性貧血で、鉄剤による治療だけでなく、その原因を突きとめることが重要です。また、胃を切除した人は、数年後にビタミンBの欠乏による貧血(巨赤芽球性貧血)を起こすことがあります。

 慢性的な貧血では、再生不良性貧血と骨髄異形成症候群(MDS)が代表的なものです。この両者は鑑別診断が難しく、見分けることができないケースもあります。骨髄異形成症候群は、不応性貧血といって再生不良性貧血に近いものから、急性白血病に移行しやすいタイプのものまで、さまざまな病型があります。骨髄異形成症候群は高齢者に多く、最近増えてきています。

 そのほか、貧血は急性白血病による場合もあるので、骨髄検査(マルク)などで確実に診断することが大切です。

白血球増加

 反応性のもの(感染症など)と、腫瘍性のもの(慢性白血病と急性白血病)があります。

 慢性白血病のひとつである慢性骨髄性白血病は、最近は健康診断で白血球増加として発見されるため、自覚症状のない早期に診断されるケースが増えています。慢性リンパ性白血病は、日本ではまれな病気です。

 急性白血病には骨髄性とリンパ性がありますが、前者のほうが多くみられます。急性白血病では、白血球数がむしろ減少していることもあります。

 そのほか、急性白血病では貧血症状や出血傾向(血小板減少、DIC[播種性血管内凝固症候群]などによる)もしばしば現れます。とくに急性前骨髄球性白血病では、DICによる脳出血の危険性があるため、診断がついたら即刻入院・治療が必要です。

 なお、白血球数が1万数千mm3程度までで、ほかに異常のない場合は、基礎疾患のないことが多く、それほど心配する必要はありません。一方、慢性の白血球減少では、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などを区別する必要があります。

リンパ節腫脹

 腫瘍性のもの(悪性リンパ腫、がん転移など)、感染症に伴うものなどがあります。最近、悪性リンパ腫の発生頻度が高くなってきています。

 悪性リンパ腫では、病型や病期などによって、治療方針や平均生存期間に大きな違いがあるため、リンパ節生検(組織の一部を採取して調べる検査)による正確な病理診断と予後因子の評価が重要です。

 なお、若い女性の有痛性の頸部リンパ節腫脹は、壊死性リンパ節炎によることも多く、その場合はしばらく経過をみていると軽快していくのが普通です。

免疫グロブリンの異常

 多発性骨髄腫とその関連疾患が問題となりますが、経過観察ですむものから治療が必要なものまでさまざまです。

出血傾向

 原因は、血小板の減少あるいは機能異常、凝固線溶系異常、血管壁の異常に分けられます。EDTA(抗凝固薬の一種)を用いた採血では、偽性血小板減少のこともあり、その場合は一般に問題ありません。

 血小板減少の代表的なものは特発性血小板減少性紫斑病(ITP)で、下腿などの点状出血(径2〜3mm程度の赤い出血斑)が特徴的です。凝固線溶系の異常の場合にみられる出血斑(紫斑)は、もっと大きな溢血斑(径5mm〜2cm程度の皮下出血)になります。

 血友病では、関節内出血や筋肉内出血のような深部出血が特徴的です。また、DICが認められる場合は、さまざまな基礎疾患を考える必要があります。

最近の治療法の進歩

 造血器腫瘍に対しては、分子標的治療薬(病気に関係する部分(分子レベル)を標的にする薬)の発展が期待されています。

 代表的なものが慢性骨髄性白血病に対するグリベックで、白血病細胞に特異的に作用することから、大変よい治療成績が得られるようになりました。これによって従来の治療方針が一変し、造血幹細胞移植は第一選択ではなくなり、またインターフェロン‐αもあまり使われなくなりました。なお最近では、グリベックが効かなくなった場合の第2世代の新薬も使えるようになっています。

 抗体医薬では、悪性リンパ腫に対してリツキサン(Bリンパ球を破壊する)が用いられるようになり、化学療法との併用で治療成績が向上してきています。

 急性白血病に対する造血幹細胞移植療法では、骨髄移植だけでなく臍帯血移植が成人にも活発に試みられるようになってきました。末梢血幹細胞移植も行われることがあります。ミニ移植は、高齢者や臓器障害のある患者さんにも実施できることから、その実施例が増えてきています。

 多発性骨髄腫に対する治療では、最近大きな進歩がみられています。サリドマイドがしばしば効果的であり、ベルケードという新薬は難治例でもかなり有効です。さらに、レナリドマイドという新薬も認可される見通しです。また、造血幹細胞移植も行われるようになり、高齢者でなければ自己(自家)末梢血幹細胞移植を積極的に実施する施設が増えてきています。

 特発性血小板減少性紫斑病では、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法が有効な場合があると報告されており、保菌者は試してみる価値があります(保険診療未承認)。とくに、ステロイド療法を行いにくい高齢者にとっては、負担の少ないよい治療法になる可能性があります。

本編の分類・編成について

 以下の各論は、「貧血と多血症」「白血病悪性リンパ腫、その他」「出血傾向」からなり、それぞれのなかで代表的疾患を扱っています。

「治療法」としては、成分輸血と造血幹細胞移植を取り上げています。前者は、安全性が社会問題にもなっており、どのような時に必要かを理解しておくことが大切です。後者は移植条件とおよその移植成績を知っておくことが治療方針を決定するうえで重要です。

(執筆者:小澤敬也