親から子どもに伝わる遺伝子という概念は、遠くギリシャ時代から考えられてきましたが、実際に遺伝子の本体がDNAという分子であるということが明らかになったのは20世紀なかごろのことです。1944年に発表されたアヴェリーらの肺炎双球菌の実験によってDNAが本体であることが示唆され、1952年のハーシーとチェイスのファージを用いた実験によって完全に証明されました。

DNAとは

 それではDNAとはどういう物質なのでしょうか。DNAはデオキシリボ核酸の略称です。塩基とデオキシリボースとリン酸が結合したヌクレオチドという分子がひとつのユニットで、それが長く鎖状につながったものがDNAです。

 塩基にはグアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類があり、したがってヌクレオチドも4種類あります。

 DNAの鎖は1本で存在する場合はまれで、2本の鎖が塩基と塩基の間にできる水素結合で互いに結合して2本鎖になっています。この時、グアニンはシトシンと、アデニンはチミンと、という具合に対合(結合)する相手が決まっています。そこでDNAの長さを表す単位は塩基対と呼ばれます。またDNAの鎖はねじれているので、2本の鎖が絡み合った「二重らせん構造」と呼ばれる構造をとっています(図1)。

 4種のヌクレオチドがどのように並んでいるかという配列自体が遺伝子に蓄えられている情報で、それによって生物種による違いや個体差などが決定されています。

RNAのはたらき

 DNAは核酸の一種ですが、核酸にはもう一種のリボ核酸(RNA)という物質があり、蛋白質を合成する時に重要なはたらきをしています。塩基のひとつがチミン(T)の代わりにウラシル(U)であり、デオキシリボースの代わりにリボースであることがRNAのヌクレオチドの特徴です。

 RNAもこのヌクレオチドが長く鎖状に結合しており、普通は1本鎖の構造をしています。

DNAの複製

 細胞が分裂する時には、それに先立ってDNAが2倍に増えます。分裂するとDNAは2つの細胞に均等に分けられ、元と同じDNAをもった細胞が2つでき上がります。このDNAが2倍になる過程は複製と呼ばれていますが、単に量が2倍になるのではなく、元のDNAの情報が正確に倍加することが必要です。

 これは塩基の対合がGとC、AとTと決まっていることで解決されています。2本鎖構造のDNAを結びつけている水素結合がいったん切断され、元の鎖は塩基がむき出した状態になり、そこに正しい塩基の対合(GとC、AとT)ができるように新しい鎖が合成されていきます。

 このようなDNAの複製は、複製した2本鎖の一方が元の鎖のままであるため、半保存的複製と呼ばれています。この半保存的複製によって、ヌクレオチド配列の情報が正確に子孫に伝わることになります。

(執筆者:山本 義弘