どんな病気か

 設計図のミスプリントが遺伝子異常だったのに対して、染色体異常は設計図の枚数違い(数の異常、倍数体)や破損(構造異常)にあたります。設計図の上には遺伝子情報が書かれているわけですから、設計図が余分になったり破れたりすると膨大な数の遺伝子の異常がまとまって起こります。

情報は多すぎてもいけない

 染色体異常をもったお子さんのお母さんから、「設計図が足りなくなったら異常が起こるのは理解できるが、余分にあってはなぜいけないのか」と質問されることがあります。

 設計図に書かれているのは単に体の材料をつくるための情報だけではありません。物をつくるのを制御するような情報もたくさんあります。情報は多すぎても少なすぎてもいけないのです。

 染色体異常症の各論は他の項目を見ていただくとして、ここではなぜ染色体異常の子が生まれてくるのか、少し詳しく解説します。

染色体異常の発生の仕組み

 染色体異常としてよく知られているダウン症は、高齢出産で生まれやすいということが知られています。ダウン症のなかには転座型といわれるタイプも5%くらいあります。その半数は両親のどちらかが転座保因者であるため遺伝的に生まれてくるのだということを、聞いたことがあるかもしれません。

 学問的には染色体異常の発生機構として、卵の過熟による染色体不分離説、遅延受精説、遺伝子異常説などいろいろな説があります。確かに母親の年齢が40歳を超えると数十分の一の確率でダウン症の子が生まれてきます。

 しかし、そのような高齢出産はわずかなので、実際にはダウン症のほとんどが若いカップルから生まれてきます。染色体異常の発生には遺伝的な背景もありますが、絶対的多数はいわゆる突然変異で生まれてくるのです。

リスクは誰にでもある

 ここで、染色体異常をもった子どもの両親にぜひ理解してほしい事実があります。それは誰でも染色体異常をもった子どもを生むリスクがあるということです。というのは、誰でも精子や卵を調べると10〜20%に染色体異常が見つかることがわかっているからです。ですから、どんなカップルでも受精卵の半数近くは染色体異常になります。

 染色体異常以外にも重い遺伝子異常が突然変異でたくさんできるのですが、これらの障害をもった受精卵の大多数は初期に流産してしまいます。その数は受精卵の70%にものぼると考えられています。このごく初期の流産は受精卵が子宮に着床するかどうかの時期に起こるので、生理が少し乱れるだけで、産婦人科医にはもちろん、本人にもわかりません。

 産婦人科医の目にとまる初期流産(妊娠3カ月ころまでの)は、このごく初期の流産を過ぎてからですが、それでも検査をすると半数以上に染色体異常が見つかります。

 このような自然の機構により、多くの染色体異常は生まれるまでに流産してしまいます。結果的に、実際に生まれてくる新生児のなかでは染色体異常は1%前後と減ってしまうのです。

(執筆者:千代 豪昭