●多因子遺伝病

 メンデル遺伝のルールにのっとった病気は、ある遺伝子座の遺伝子型により悉無(オール・オア・ナッシング=すべてかゼロ)形式で形質を決定する「単一遺伝子病」と呼ばれます。

 その一方、形質のなかには身長に代表されるように、連続的な形質がたくさん観察されます。このような形質は、複数の染色体に存在する遺伝子座の遺伝子産物(蛋白)機能の総和に環境要因が加わり、それらの相互作用の結果、個体の形質が決まります。このような形質に関係する遺伝を「多因子遺伝」と呼んでいます。

 多因子遺伝病には、本態性高血圧症、糖尿病などの生活習慣病や精神疾患が知られています(図12)。

 非連続的形質ではありますが、多くの先天奇形症候群も多因子遺伝病と考えられています。非連続的多因子遺伝病では家系内で同じ病気になる確率は一般と比較すると高いのですが、メンデル遺伝病に比べると低く、近親度(血縁の近さ・遠さの尺度、表5)が下がると、病気になる確率は急速に低下し、一般集団と同程度に近づきます。

●母系遺伝

 ミトコンドリアは、生命を維持し、活動に必要なエネルギーをつくるために細胞が備えている構造で、いわば発電所のような役割を果たしています。ミトコンドリア自身、核内DNAとは別に固有のDNA(デオキシリボ核酸)と蛋白合成システムをもっています。ミトコンドリアDNAは環状で、1万6569塩基対から構成されています。

 精子に含まれるミトコンドリアは、受精の際に卵のなかに入り込むことができないため、すべての子どもは男女の区別なく母親由来のミトコンドリアDNAのみが機能し、父親のミトコンドリアDNAの影響は受けません。したがって、ミトコンドリアDNAの変異によって起こるミトコンドリア遺伝病は母系遺伝することになります(図13)。エネルギー産生に支障を来し、神経系、心臓循環器系などの機能異常を引き起こします。

(執筆者:田村 和朗