生活習慣病とは

 厚生労働省によると生活習慣病は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義されています。具体的には、高血圧、糖尿病、脂質異常症など、以前、成人病と呼ばれていた主に中年期以降に発症するありふれた疾患群です。

「成人病」では、歳をとったから病気になるというイメージがありますが、修正可能な悪い生活習慣が大きな要因であることを認識し改善することが、発症予防につながると強調したかったようです。定義からすると、生活習慣だけが原因のようですが、日常会話でも「体質」という言葉を使うように、私たちは病気のなりやすさには遺伝子の影響があることに気づいています。たとえば「うちは糖尿病の体質なので、太らないように気をつけなければいけない」などです。

生活習慣病と遺伝の関係

 それでは生活習慣病の体質を決めている遺伝子はどんな遺伝子なのでしょうか?「メンデル遺伝と疾患」の項目に出てきたような遺伝病は、ひとつの遺伝子の異常によって発症する疾患であるといってよいでしょう。生活習慣病は少数の例外を除いて明らかにこれらの遺伝病とは異なります。

 まず、家系内で伝わる様式はメンデル遺伝形式ではありません。また、大人では60%以上の人が罹患するなど極めて頻度が高い疾患です。各疾患のなりやすさを決めている遺伝子は複数あることが原因であり、同じ病気になった人でも、そのなりやすさを決めている遺伝子は異なっている場合も多いのです。また、発症の原因となる悪い生活習慣も疾患ごとに異なりますが、複数あることがわかっています。

 このように複数の遺伝子と複数の生活習慣を含めた環境因子がその発症に関わる疾患群を「多因子遺伝性疾患」と呼びます。これには生活習慣病だけでなく、口唇口蓋裂先天性心疾患などの新生児期にみられる先天奇形も含まれます。

生活習慣病の発症を防ぐためには

 生まれつき生活習慣病になりやすい遺伝子を多くもっている人は、それほど悪い生活習慣をもっていなくても発症する可能性があります。逆にその遺伝子をあまりもっていなくても、悪い生活習慣が重なると発症すると考えられます。こうしたことから、個々人のゲノム(遺伝子全体を意味します)が簡単に安く解析できるようになれば、どんな生活習慣病になりやすいかが発症前にわかるので、予防に使えるのではないかと考えられてきました。

 最近のゲノム医学研究の進歩はめざましく、生活習慣病になりやすい体質をつくっている遺伝子が次々と明らかになってきています。しかし、すぐに予防に応用できるかというと、そう簡単にはいかないこともわかってきました。明らかになった個々の遺伝子の発症への関与が、生活習慣の影響に比べればはるかに小さいのです。

 ただし、今後研究が進んで関与する多くの遺伝子が明らかになれば、ある程度の予測は可能で、予防に役立つ可能性はあります。

(執筆者:羽田 明