高血圧とは

 高血圧の診断は、原因を問わず、血圧が基準よりも高いことに基づいています。1999年2月、世界保健機関(WHO)と国際高血圧学会により、新しい高血圧の基準が発表されました。これによると収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上の両方あるいは一方のみでも該当すれば、高血圧と診断します。

 高血圧は、原因がわからない本態性高血圧と、何らかの病気が原因で起こる二次性高血圧に分類します。二次性高血圧の原因として、腎性高血圧(腎臓の病気による)、内分泌性高血圧(ホルモン異常)、血管性高血圧(血管の狭窄などによる)などがありますが、95%程度は本態性高血圧です。

本態性高血圧とその要因

 本態性高血圧は「血圧が高い」ことのみで診断されるので原因はさまざまで、異なった遺伝要因と環境要因により引き起こされる多因子遺伝病であると考えられます。2005年の調査では患者推定数が781万人と、日本で最も患者数の多い疾患でした。

 遺伝要因が関与することは、以下の事実より明らかです。まず、片親あるいは両親が高血圧であった場合、子どもが高血圧になる確率は、両親とも正常血圧である場合と比べて、約2倍です。また、血縁者と非血縁者を比較した研究で、遺伝要因は拡張期血圧で42%、収縮期血圧で30%と推定しています。

 他の双生児を対象とした研究や家系の解析でも、遺伝要因の関与は30〜40%と推定しています。したがって、残りの60〜70%は生活習慣などの環境要因によるということになります。

 これまでの疫学的研究から、環境要因として肥満、過剰な塩分摂取、過度の飲酒、運動不足、ストレス、たばこなどが明らかになっています。とくに肥満と飲酒はその程度と血圧上昇の関連がはっきりしています。

本態性高血圧と遺伝子

 糖尿病と同様、高血圧でも全ゲノムを対象とした研究が進められましたが、糖尿病とは異なり、高血圧では原因となる遺伝子がなかなか見つかりません。これも、高血圧がさまざまな疾患の集まりであることが原因だと思われます。

 これまでの研究で、関与が証明された遺伝子にアンジオテンシノーゲンがあります。この遺伝子は、血圧値に大きな影響のあるレニン・アンジオテンシン系の重要な部分を担っていて、塩分による血圧の上昇に関与していると考えられています。高血圧になりやすい遺伝子型をもつ人が、塩分をとりすぎると発症すると考えられるのです。

 もともと人類は、その生活環境から1日3g以下の塩分で生活してきたと考えられています。その状況では、少ない塩分で血圧を維持することが生き残るために重要だったと考えると、現在の日本のように、お金さえ出せば何でも食べることができる飽食の時代になって初めて、病気の遺伝子とされてしまったとも考えられるのです。

 実際、ゴリラやチンパンジーのアンジオテンシノーゲン遺伝子型はすべて高血圧になりやすいタイプでしたので、こちらが祖先型であったことは間違いないでしょう。このような考え方を倹約遺伝子仮説といい、糖尿病でもあてはまるかもしれません。

(執筆者:羽田 明