さまざまな診断がある

 妊娠中に胎児の状態を検査して診断することを、出生前診断といいます。出生前診断には、胎児の情報を調べる方法として、超音波検査に代表される胎児の画像検査、遺伝子や染色体の検査、機能や代謝産物の検査に基づく診断、胎児に由来する細胞や代謝産物が母体の血液中に認められることを利用する方法があります。

 診断の時期は、胎児の状況や母体の状況によって、また診断の目的によって異なりますが、妊娠が確認されてから出生までの時期全体が含まれます。

 そのなかで、染色体や遺伝子の検査は、遺伝医学に関係する学会のガイドライン(2003年)によれば、「遺伝学的出生前検査(診断)」と呼ばれ、「絨毛、羊水、羊水細胞などを用いて胎児の遺伝学的または先天的障害の有無を知る目的で行われる染色体検査、生化学的検査、細胞学的検査などである。絨毛は妊娠10〜11週に、羊水・羊水細胞は妊娠15〜17週に採取するのが一般的である。他に胎児血や胎児組織などを採取して検査する場合もある」とされています。

 また、体外受精に際して受精卵の一部の細胞を用いて行う診断は、着床前診断と呼ばれます。

 胎児の状態を確認するための超音波検査で、胎児の異常(奇形など)が診断されることがあります。超音波検査はごく一般的に行われる検査であるために、出生前診断のひとつであるという意識が医療側にも検査を受ける側にも少なく、しかもまた、このような異常は胎児がある程度成長して初めて確認できるために、通常は妊娠の中期以降になって診断が確実になります。したがって、ご夫婦(とくに妊婦さん)が診断後から子どもの誕生までの間に精神的な負担を強いられることもありえます。

 母体血液からの胎児診断として、ダウン症の確率を知ることを主な目的とする母体血清マーカー検査がありますが、あくまでも間接的に確率を算出する検査です。確実な診断を行うものではなく、診断の確定には羊水検査が必要です。しかもその確率は、妊婦の年齢におけるダウン症の出産率をもとに計算されるので、高齢の妊婦では元々の年齢における出産率が高いため、母体血清マーカー検査の結果の確率も高くなる傾向があります。

適応と注意点

 遺伝学的出生前検査(診断)は、診断の目的が明らかで、かつ診断のための具体的な方法が確立されていることが必須で、表2のような疾患について行われることがあります。

 すべての出生前診断は、胎児の生命保全と反する結果が導かれる可能性があるため、診断がもたらす意味をご夫婦が十分に理解し同意すること(十分なインフォームド・コンセント)および厳重な倫理的配慮が必須となり、検査の前には十分な遺伝カウンセリングを受けてください。

(執筆者:澤井 英明