どんな病気か

 先天性心疾患とは、心臓あるいは心臓のまわりの血管の構造が生まれつき異常な病気です。とても多くの種類があり、個々の疾患については各論に譲りますが、全体では約100人の新生児に1人の割合で認められるほど頻度の高い疾患です。心臓だけでなく、手足や顔の奇形など、他の先天的な異常を伴うこともあります。

原因は何か

 胎児の心臓は、遺伝子に組み込まれたプログラムに従って、いくつもの遺伝子が、必要な時期に、必要な場所で、必要な量だけ、正確にはたらくことにより形成されていきます(心臓の発生)。この心臓の発生は、折り鶴を折る過程にたとえることができます。どの段階で折りたたみ方を間違えても、正しい鶴はできあがりません。心臓は、受精後3週ころより形成が始まり8週ころまでにほぼ原型ができあがります。この時期に何らかの胎内環境要因が心臓を作る遺伝子のはたらきに影響しても、やはり先天性心疾患の原因になります。

 ですから、ほとんどの先天性心疾患は、遺伝的要因と環境要因が作用し合い、その両者の作用の合計がある閾値を超えると発症する病気(多因子疾患)であると考えられています。

 遺伝的要因としては、遺伝子異常や染色体異常、環境要因としては、先天性ウイルス感染(風疹、コクサッキーウイルス)や、母体のアルコール摂取、薬剤、喫煙、糖尿病、貧血などが代表的です。

 なかには、ひとつの遺伝子の異常が原因で発症する先天性心疾患(単一遺伝子病)もありますが、その場合でも、同じ家系で同じ遺伝子異常をもっていても同じ型の心疾患になるとは限りません。逆に、まったく異なる遺伝子の異常で、同じ型の心疾患を発症することもあることがわかってきました。

 先天性心疾患の原因の内訳は、既知の単一遺伝子異常や染色体異常などの明らかな遺伝的要因によるものが約13%、胎児期の感染や薬剤等の催奇形因子や環境要因によるものは約2%といわれています。残りの85%では、はっきりした原因がわかりません。

 先天性心疾患を合併しやすい症候群のなかで、染色体異常および遺伝子異常が原因であることが明らかとなっているものには、ダウン症候群(21番染色体トリソミー)、ターナー症候群(X染色体モノソミー)、22q11・2欠失症候群(22番染色体長腕部分欠損、TBX1遺伝子異常)、ウィリアムズ症候群(7番染色体長腕部分欠損)、ホルトオーラム症候群(TBX5遺伝子異常)、アラジール症候群(JAG1遺伝子異常)、 ヌーナン症候群(PTPN11遺伝子異常、KRAS遺伝子異常、RAF1遺伝子異常ほか)などがあります。これらの疾患の多くは、心臓以外にも特徴的な症状を認めます。

 単一遺伝子異常や染色体異常によるものを除くと、一般的に、先天性心疾患の患児が1人生まれた場合、次の子が何らかの先天性心疾患を発症する確率は2〜5%であり、一般に比べやや高くなることがわかっています。また、親が先天性心疾患をもつ場合に子どもが先天性心疾患を発症する確率もほぼ同様です。

検査と診断

 先天性心疾患についての遺伝学的検査には、染色体検査、FISH検査、遺伝子配列解析などがあります。

病気に気づいたらどうする

 小児科、小児循環器科を受診します。

関連項目

先天性の心臓の病気

(執筆者:森崎 裕子