先天性心疾患は先天異常ですので、ここでは後天性心疾患について述べます。

冠動脈疾患とは

 後天性心疾患で最も多いのが、心臓の筋肉に血液を供給している冠動脈に起こる冠動脈疾患です。この疾患は、何らかの原因で冠動脈に狭窄や閉塞が起こり、その血管が血液を供給している心筋が死んでしまうので、虚血性心疾患とも呼びます。供給する血液量が減少して運動時などに胸の痛みを覚える状態を狭心症といい、さらに進んで血流が遮断された状態が心筋梗塞です。

冠動脈疾患と遺伝

 家系と双生児を対象にした研究から、冠動脈疾患に遺伝要因が関与していることははっきりしています。理由は不明ですが、男性のほうが女性よりもこの病気にかかるリスクが高いことが知られています。起こりにくい女性が発症した場合、親子あるいは兄弟の男性が発症する確率は、一般集団の7倍です。一方、男性が発症した場合、親子あるいは姉妹の女性が発症する確率は2・5倍です。

 最初に発症した人が若ければ若いほど、そのリスクは高くなります。双生児を対象にした研究でもほぼ同様の傾向が報告されています。

動脈硬化を進める遺伝的要因

 冠動脈疾患の主要な原因は冠動脈の動脈硬化です。動脈硬化は、(1)動脈の内膜に脂肪が線状に沈着し始める、(2)炎症に関連して白血球および赤血球が侵入する、(3)カルシウムの沈着と脂肪に富む柔らかい固まりができる、の順で進行します。この段階で柔らかい固まりが、何らかの原因ではがれて血管の先に飛び、血管を詰まらせると心筋梗塞が起こることがあります。

 ここで柔らかい固まりがはがれず、さらに動脈硬化が進行すると、線維組織ができ、そのなかに血管が新しくできたり、出血、カルシウム沈着を繰り返すことにより、血管はますます狭くなり、狭心症の発作を起こすようになります。さらに進むと心筋梗塞に至ることがあります。

 心筋梗塞を起こす単一遺伝子病として、500人に1人の頻度の家族性高コレステロール血症があります。悪玉コレステロールであるLDLコレステロールの処理に携わる遺伝子の異常が原因です。しかし家族性高コレステロール血症は心筋梗塞の生存者の5%程度を占めるにすぎず、他は多因子遺伝性疾患です。このグループでは脂質や、血管の収縮などに関する因子、血液凝固に関わる因子、炎症および免疫に関わる因子などの関与が報告されています。

 また、全ゲノムを対象とした研究で、日本から発表された遺伝子として、リンフォトキシンα(LTA)、ガレクチン2、BRAP遺伝子などがあります。

 発症に関わる生活習慣要因としてはたばこ、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満があげられます。

小児の冠動脈疾患

 一方、小児では虚血性心疾患の頻度は低いのですが、最大の原因は川崎病で、この病気の合併症である冠動脈病変に続発します。川崎病は生後11カ月頃を発症ピークとする原因不明の熱性疾患で、全身の血管に炎症が起こります。大部分は自然治癒しますが、冠動脈の炎症から冠動脈瘤が発生することがあります。

 この川崎病も多因子遺伝性疾患で、最近、ITPKCという免疫反応に関する遺伝子が発症に関与していることが明らかになりました。

(執筆者:羽田 明