「老人」から「高齢者」へ

 「老」という漢字は腰の曲がった人が杖をついている姿を表した象形文字で、年をとることによって起こる衰えを表現しています。したがって老年期とは一般に老いの始まる時期、あるいは老いがはっきりと現れる時期と定義されています。

 人の発達段階からみると、老年期とは成人期に引き続く人生最後の時期と定義されており、その境界となる年齢は一般に65歳とされています。どのような根拠に基づき65歳以上を老年期と定めたのか、そのいきさつは不明です。一説によると、19世紀・ドイツの有名なビスマルクという政治家が年金制度を定めた際に、その当時65歳を超えて長生きする人はごくまれであるという理由で、65歳以上を老人と定義したといわれています。

 「老」という言葉には、古くは「長老」「老中」などで代表されるように、尊敬の意味が込められていました。しかし現在では「老害」「老醜」などで代表されるように、マイナスのイメージが強くなっていて、「老人」という言葉は使わず、「高齢者」という言葉を用いるのが一般化しています。そして一般に65歳以上の人を高齢者、さらに65〜75歳の人を前期高齢者、75歳以上の人を後期高齢者としています。

暦年齢だけでは定義できない

 医学の進歩により人の平均寿命が急速に延び、人生80年時代を迎えた現在では、このような老年期を65歳以上として一括する単純な定義では、時代の動きにそぐわないと考えられるようになりました。

 「老い」に対する考え方は人によって異なっており、実にさまざまです。平均寿命が延びた現在では、20〜30年前に比べて元気で活動的な高齢者が増えています。平均寿命が50代前後であった戦前と80代の現在とでは、社会の情勢も大きく変化しています。平均寿命には地域的な差もあり、暦年齢で老年期の定義をするにあたっては、時代的、地域的および社会的な背景などを考慮することが必要になります。

新しい区分の仕方

 医学的観点からも加齢に伴う身体機能の低下が顕著になるのは75歳以上なので、75歳以上を高齢者とすべきであるとの意見もあります。このような状況を考慮して、米国のニューガーテンは1975年に老年期を暦年齢ではなく、社会的活動度を指標として老年前期(ヤング・オールド)と老年後期(オールド・オールド)の2つに分けることを提唱しています。

 老年前期は労働や子育てなどの社会的な責務から解放され、社会的活動に自分の時間を費やすことが可能な世代です。一方、老年後期は旧来の意味での老年期で、心身の衰えによって特徴づけられる時期です。前期と後期の境は、75〜80歳くらいですが、これはあくまでも目安としての意味しかもたず、前期と後期を区別する重要な物差しは、社会的活動度であるとされています。

 また老年前期・後期のほかに、超高齢期(オールデスト・オールド)を加え、3段階に分類する人もいます。この場合、超高齢期の境界となる暦年齢は85〜90歳とされています。

(執筆者:折茂 肇