老化とともに、体の生理的機能はどのように変化するのでしょうか。

 まず運動機能については瞬発力が低下し、持続力も低下します。同時に平衡感覚も加齢とともに低下するために、体の安定性が損なわれて転倒しやすくなります。外界からの情報は眼、耳、鼻などの感覚器官によって受け取られ、中枢神経系を介して筋肉や関節に伝えられます。これらの刺激に反応して体が動くので、加齢に伴い反応は鈍くなります。

 知覚機能のなかでは、眼の調節力の低下が最も早くから現れ、老眼になります。聴覚については、加齢に伴い高音域から聞こえにくくなります。触覚、痛覚、味覚も加齢とともに鈍くなります。刺激に対する反応時間が長くかかるようになり、反射神経の機能が低下します。高齢者の自動車運転で交通事故が多いのはそのためです。

(1)神経系

 知能の低下については「老年期の心」の項で述べているので参照してください。筋力は加齢とともに弱くなり、反射時間は全般的に遅くなります。運動能力は瞬発力、持久力ともに老化により低下します。感覚器の変化は最も早期から感知されるもので、老視は40代後半より現れ、徐々に進行します。聴力の低下は70歳以後に現れる人が多く、平衡感覚も老化により鈍くなります。味覚、嗅覚も変化します。これは舌にある味蕾の数の減少、嗅球にある嗅覚細胞の老化などに影響されます。

(2)免疫機能

 老化とともに、免疫機能に影響を及ぼす胸腺が萎縮し、末梢血中のリンパ球のうちT細胞が減りますが、B細胞は変わりません。加齢に伴い、T細胞サブセットであるOKTとOKTの比(ヘルパーT細胞サプレッサーT細胞)は増加します。その結果、生体の防御力が低下します。

(3)内分泌代謝系

 加齢とともに最も大きく変化するのは、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体刺激ホルモン(LH)などの下垂体ホルモンです。血中の卵胞刺激ホルモンは男性では60〜80歳で増え、女性では50〜70歳で著しく増え、80代で下降します。血中の黄体刺激ホルモンは男性では50〜80代で増え、女性では50〜70代で著しく増えます。下垂体後葉ホルモンは、加齢により分泌が亢進します。

 副甲状腺ホルモンの血中レベルは加齢に伴い男女とも高値を示しますが、カルシトニンの血中レベルは逆に著しく低下します。

 副腎皮質に由来する男性ホルモンの一種であるデヒドロエピアンドロステロンの血中レベルは、加齢に伴い直線的に低下します。一方、同じく副腎皮質に由来するコルチゾールの血中レベルは加齢に伴って変化しません。

 糖質代謝は加齢とともに変化し、耐糖能異常(血糖の上昇)を示す人が増えます。

 血中脂質(コレステロール、中性脂肪)は10〜50代にかけて増え、以後は変わりません。

(4)循環器系

 加齢に伴い心臓の心筋の収縮力が弱まります。収縮期血圧(最高血圧)は加齢に伴い上昇します。不整脈の頻度は老化に伴い著しく増えます。運動時の心拍出量の増加は若年者より弱まるため、運動能力が高齢者で低下する一因になっています。

(5)呼吸器系

 換気機能が、加齢に伴い全般的に低下します。肺活量、1秒量、1秒率は老化に伴い直線的に低下します。酸素を取り込み二酸化炭素を排出するガス交換は、老化に伴いその効率が悪くなり、肺拡散能力が低下します。

(6)消化器系

 老化に伴い胃、小腸、大腸などの粘膜が萎縮します。酸の分泌能が低下します。肝臓の細胞数が減りますが、肝機能はほとんど変わりません。

(7)腎・泌尿器系

 腎機能の指標である糸球体濾過率(GFR)および腎血流量は、加齢に伴い直線的に低下します。

(執筆者:折茂 肇