老化に伴う心の変化を知能、人格・心理的側面からみると、以下のようにまとめられます。

(1)知能

 かつては年をとると知能が衰えると考えられていました。しかし現在では、知能は20代以降も発達し続け、少なくとも80歳くらいまでは社会生活に必要、かつ十分な機能が維持できることが証明されています。

 高齢者でとくに問題になるのは記銘力 (ものを覚える力)の低下です。記銘力の低下は聞いたことをすぐ忘れる、同じことを何度も聞くなどの症状により気づきます。それに比べて、古い記憶は高齢になっても比較的よく保たれていますが、それも徐々に不正確になり、思い出せないことが多くなってきます。したがって社会生活に支障を来すほどの記憶力の衰えが認められた時には、老年期認知症などの疾患が疑われます。

 人の知能は流動性知能(記銘力、計算能力など)と結晶性知能(判断力、総合力)の2つに大別されます。一般に流動性知能は30歳以降、ほぼ直線的に低下しますが、結晶性知能は高齢になっても低下しません。若い時には理解できなかったことが年をとって初めて理解できる、ということはしばしば経験されることです。年をとったら皆ぼけるというのは大きな間違いで、老年期認知症の患者さんは65歳以上の高齢者の5〜6%にすぎないのです。

 高齢者でも結晶性知能にますます磨きがかかり、各分野でリーダーとして活躍している人が大勢います。高齢者のなかには知的資産家とも呼ぶべき、若い人とは異質の知能をもった人が大勢いるのです。

(2)人格・心理的側面

 昔から高齢者の性格の特徴として、がんこ、利己的、愚痴っぽい、疑い深い、心気的(いらいらしがち)であるなどがあげられています。しかし、従来いわれてきたがんこさは認知症によることが多く、また抑うつ傾向はうつ病によるものと考えられており、このような病的状態でみられる特徴と、正常な高齢者の人格の変化が混同されている場合が多くあります。

 人の人格は成人期〜老年期を通じて比較的安定していて、青年期までにつくり上げられた人格の基本的な部分は変わらず、加齢的変化よりも世代の違いや性差の影響のほうが大きいといわれています。

 60歳以上の人で多く認められる性格としては、保守性、あきらめ、義理堅さ、依存的などで、従来多いとされていた嫉妬、不満、懐疑心などは多くなかったとの調査結果があります。ただし、75歳以上の高齢者では活動性の減退・身体的不自由に関する不安、不満、短気などの訴えが多いようです。

(執筆者:折茂 肇