どのような状態か

 老年期になると、基礎代謝(生命維持のために自動的に行われている活動[心臓を動かす等]に必要で、1日に消費するエネルギーの60〜70%を占める。基準値は50〜69歳の男性で1400kcal、女性で1110kcal、70歳以上の男性では1280kcal、女性で1010kcal)と身体活動度は年齢とともに減り、個人差も大きくなります。そのためエネルギー必要量の個人差も年齢に伴い大きくなります。

 BMIが25以上の肥満者(BMI:Body Mass Indexの略で、体格指数ともいう。身長[m]を体重[kg]の2乗で除したものであり、22が理想体重)の割合は、70歳以上の高齢者でも25%以上と高率です(図1)。このため高齢者でも栄養過多とそれに伴う生活習慣病が大きな問題となっています。一方、寝たきりや要介護高齢者では、低栄養が深刻な問題であり、同じ暦年齢でも栄養状態・栄養必要量は個人個人により大きく異なります。

自立高齢者の栄養や運動について

 国民栄養調査の結果をみると、70歳以上の高齢者でも肥満やメタボリックシンドロームを高率に認め、栄養過多が問題となっていることがわかります(図2)。体重やBMIが変わらなくても、年齢に伴い筋肉や骨などの量が減り、体脂肪の割合が増えるため、身体の質的には肥満状態にあるといえます。筋力が低いほど死亡しやすいことや、骨粗鬆症・骨折、肥満および生活習慣病を予防するうえからも、適度な栄養と運動が大切です。運動は歩行が適しており、「ややきつい」と感じる程度で行うのが効果的です。厚生労働省の「健康日本21」には高齢者の運動目標値として1日あたり男性6700歩、女性5900歩が示されています。しかし体調や天候の悪い時は休む、病気のある方は主治医と相談するなど、身体に無理のない運動を行ってください。

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」によると70歳以上の高齢者における推定エネルギー必要量は平均的生活活動度の男性で2200kcal、女性で1700kcalとなっており、50〜69歳の値(男性2450kcal、女性1950kcal)に比べ、男女ともに250kcal低めとなっています。一方、実際には75歳以上の男性で平均1982kcal、女性で1613kcalをとっており、推定エネルギー必要量よりも少なくなっています。

 しかし、栄養素別にみてみると、脂肪エネルギー比率が30%以上の人が男女ともに増加しており、男性で約2割、女性で約3割となっています。脂肪エネルギー比率が高くなると、エネルギー摂取量が大きくなり、ひいては肥満、メタボリックシンドローム、さらに冠動脈疾患のリスクを増加させます。このため、生活習慣病の予防目的で目標量が示されており、男女とも70歳以上の高齢者では、総脂質の目標量が20%以上25%未満(総エネルギーに占める割合)となっています。

 蛋白質に関しては、高齢者においても壮年者と同じ値が提示されており、推奨量で男性60g日、女性50g日です。ちなみに、可食部100gあたり牛肩肉の赤身は、20・2gの蛋白質と12・2gの脂質を、まあじでは20・7gの蛋白質と3・5gの脂質を含みます。

 「日本人の食事摂取基準」の基本的考え方にも記載されているように、エネルギーや栄養素の「真」の望ましい摂取量は、個人によって異なります。上記の数値はあくまで目安と考え、各個人の体格、生活活動度、ストレス度などを考え、調整を行う必要があるので、栄養士に相談することも大切です。

要介護高齢者の栄養状態と対策

 要介護高齢者の大きな問題は低栄養です。物を食べる能力が落ちてくると低栄養になり、免疫能の低下から肺炎などの感染症や褥瘡(床ずれ)を起こし、さらに低栄養が進むという悪循環に陥ります。また、嚥下障害は不顕性誤嚥(むせることなしに気道に物が入る)により、嚥下性肺炎の原因ともなります。

 老人性肺炎は治りにくいものが多く、高齢者の死因で最も重要な部分を占めるので、低栄養対策は重要です。経口摂取、経管栄養、経静脈栄養などを必要に応じて組み合わせることとなりますが、専門的な知識を必要とするため、医師と十分に相談してください。